ギター 新入荷
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区分
:
輸入クラシック 新作
製作家/商品名
:
パブロ・サンチェス・オテロ Pablo Sanchez Otero
モデル/品番 Model/No.
:
トーレスモデル model Torres ’La Retornada No.32
弦長 Scale Length
:
650mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
2024年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース(ヒスコック)
備考 Notes
:
ネック:セドロ 指 板:エボニー 塗 装:セラック 糸 巻:バーネット 弦 高:1弦 3.5mm /6弦 4.0mm 〔製作家情報〕 パブロ・サンチェス・オテロ Pablo Sanchez Otero(1986~) スペイン北西部のガリシア州の美しい港湾都市ア・コルーニャに生まれ、現在も同地に工房を構える製作家。 もともとは建築を学んでいましたが、机上での製図に終始する作業に飽き足らず、木にじかに触れることから生まれる木工への興味が次第に増してゆきます。これがギターに対する愛情と重なってゆき、地元の工芸専門学校で何年か家具製作とデザインを学んだあと、2009年にバルセロナの製作家 Jean Pierre Sardin 主宰のサマーコースでギター製作を受講。これを機に楽器製作を生業とする事を決心します。その後2011年までの2年間、地元の美術工芸学校の古楽器製作のコースでヴァイオリンとルネサンスリュートの製作を学びます。また2010年と2012年の夏には、彼の彼の製作哲学に決定的な影響を与えることになる、名工ホセ・ルイス・ロマニリョスのシグエンサ講習会に参加。そこでロマニリョス本人の他 Jaum Bosser やステファン・リーズらからもビウエラとスペイン伝統のギター製作法を、また楽器の修復技術について学んでいます。 その間も知識と技術を磨くべく、彼はスペインからイギリス、ノッティンガムシャーのニューアーク=オン=トレントに居を移し、同国のAdrian Lucas, James Listerらからアコースティックやエレキギターの製作を学びます。さらに2013年にはベルギーのAmberesに移り、同地のLa Escuele Internacional de Luteria de Amberes(ILSA)にて楽器修復の学科を終了後、2019年まで同校にて教鞭を執る傍ら本格的に製作活動を展開します。現在は工房を生まれ故郷であるスペイン、コルーニャに移し製作と修復を精力的に行っています。 最大の師であるロマニリョスから受け継いだ、細部まで妥協を許さない繊細な造作、木の個性を活かした落ち着きのある洒脱な意匠、トーレスを基本とするスペイン伝統工法に立脚しながらどこかクロスオーバーな瑞々しい音色の魅力等は現在のスペインの若手の中でも静かに異彩を放っており、国内外で評価の高まりを見せています。 トーレスモデルをメインとするクラシックモデルの他、極めて個性的なデザインのブズーキ、マンドリン、ウクレレ、アコースティックギター等も製作しています。 〔楽器情報〕 パブロ・サンチェス・オテロ製作 'La Retornada' 2020年 ♯32 の入荷です。 本作は氏がベルギーのILSAで教鞭を執っていた頃に着手され、昨年2024年の夏に完成されたもので、当初は出荷用としてではなく、いくつかのギターフェスでの展示としてのみ公にされた、いわば秘蔵の一本と言えるもの。彼のラインナップにおけるもっとも主要なモデルであるトーレスモデル(アントニオ・デ・トーレスの銘器 1888年製のSE114をベースに、オテロ氏の個性的なセンスを盛り込んだオリジナルなモデル)と同じ設計で作られており、表面板はヨーロピアンスプルース、横裏板はインドに野生していた純粋なインディアンローズウッドで1950年ごろに英国に輸出されたものを使用しており、まさにその野趣あふれる木目に目を奪われます。全体はセラックニスによる繊細な仕上げで、この製作家ならではの慎ましくもモダンな外観を気品たっぷりにまとめあげています。 表面板力木構造はサウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー、サウンドホールの高音側と低音側にはそれぞれ1枚ずつの薄い補強板と、近接する横板のカーブに沿うように斜めにして1本ずつの短い力木が設置されています。そしてくびれ部より下は左右対称7本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止めるようにV字型に設置された2本のクロージングバーという全体の配置構造で、トーレス作のSE114の設計に忠実に倣っています。レゾナンスはF♯の少し上に設定されています。ネックは薄いCラウンドシェイプでスペイン製としてはとてもコンパクトなグリップ感があり、日本女性の方でもストレスを感じないような形状で作られています。弦高値は3.5/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)、高音側はやや高めの設定ですが弦の張りが中庸なのでやはりさほどに弾きにくさは感じません、サドル余剰は2.5~3.5mmありますのでお好みに合わせてさらに低く調整することも可能です。重量は1.43㎏。 低音の重心感ときりっとした高音とが前景化し中低音が慎ましくそれを支えるようなバランス感で、独特の遠近感が生まれており、ポリフォニックな旋律において各声部が彫塑的に現出する感覚があります。インディアンローズウッド仕様ならではの迫力ある響きですが、表情は華やかさよりもむしろ木のナチュラルな響きゆえの落ち着きがあり、演奏において曲に明確な雰囲気を与えています。 本器に名付けられた 'La Retornada' は「帰還せし者」の意で、スペインからイギリス、ベルギーを経て生まれ故郷へと戻ってきた製作家自身の姿もまた投影したものとなっています。
定価(税込) : 1,760,000 円
販売価格(税込) :
1,408,000 円
区分
:
輸入クラシック 新作
製作家/商品名
:
パブロ・サンチェス・オテロ Pablo Sanchez Otero
モデル/品番 Model/No.
:
トーレスモデル model Torres ’La Perdiz’ No.44
弦長 Scale Length
:
650mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
2025年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
バーズアイメイプル Solid Birdseye Maple
付属品 Option
:
ハードケース黒(Manzano case)
備考 Notes
:
ネック:セドロ 指 板:エボニー 塗 装:セラック 糸 巻:フステーロ 弦 高:1弦 3.6mm/6弦 4.5mm 〔製作家情報〕 パブロ・サンチェス・オテロ Pablo Sanchez Otero(1986~) スペイン北西部のガリシア州の美しい港湾都市ア・コルーニャに生まれ、現在も同地に工房を構える製作家。 もともとは建築を学んでいましたが、机上での製図に終始する作業に飽き足らず、木にじかに触れることから生まれる木工への興味が次第に増してゆきます。これがギターに対する愛情と重なってゆき、地元の工芸専門学校で何年か家具製作とデザインを学んだあと、2009年にバルセロナの製作家 Jean Pierre Sardin 主宰のサマーコースでギター製作を受講。これを機に楽器製作を生業とする事を決心します。その後2011年までの2年間、地元の美術工芸学校の古楽器製作のコースでヴァイオリンとルネサンスリュートの製作を学びます。また2010年と2012年の夏には、彼の彼の製作哲学に決定的な影響を与えることになる、名工ホセ・ルイス・ロマニリョスのシグエンサ講習会に参加。そこでロマニリョス本人の他 Jaum Bosser やステファン・リーズらからもビウエラとスペイン伝統のギター製作法を、また楽器の修復技術について学んでいます。 その間も知識と技術を磨くべく、彼はスペインからイギリス、ノッティンガムシャーのニューアーク=オン=トレントに居を移し、同国のAdrian Lucas, James Listerらからアコースティックやエレキギターの製作を学びます。さらに2013年にはベルギーのAmberesに移り、同地のLa Escuele Internacional de Luteria de Amberes(ILSA)にて楽器修復の学科を終了後、2019年まで同校にて教鞭を執る傍ら本格的に製作活動を展開します。現在は工房を生まれ故郷であるスペイン、コルーニャに移し製作と修復を精力的に行っています。 最大の師であるロマニリョスから受け継いだ、細部まで妥協を許さない繊細な造作、木の個性を活かした落ち着きのある洒脱な意匠、トーレスを基本とするスペイン伝統工法に立脚しながらどこかクロスオーバーな瑞々しい音色の魅力等は現在のスペインの若手の中でも静かに異彩を放っており、国内外で評価の高まりを見せています。 トーレスモデルをメインとするクラシックモデルの他、極めて個性的なデザインのブズーキ、マンドリン、ウクレレ、アコースティックギター等も製作しています。 〔楽器情報〕 パブロ・サンチェス・オテロ製作 トーレスモデル 'La Perdiz' 2025年 #44 新作の入荷です。 彼のフラッグシップモデルとなっているもので、アントニオ・デ・トーレスの銘器 1888年製のSE114をベースに、慎ましくモダンな雰囲気を纏わせたような、瑞々しく個性的なトーレスモデルに仕上がっています。本器に付けられた名前 ’La Perdiz’はヤマウズラの意で、これは横裏板に使用されたバーズアイメイプルのスペイン名‘arce ojo de perdiz’ からとったものだそう。 表面板力木構造はサウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー、サウンドホールの高音側と低音側にはそれぞれ1枚ずつの薄い補強板と、近接する横板のカーブに沿うように斜めにして1本ずつの短い力木が設置されています。そしてくびれ部より下は左右対称7本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止めるようにV字型に設置された2本のクロージングバーという全体の配置構造で、トーレス作のSE114の設計に忠実に倣っています。レゾナンスはFの少し下に設定されています。 トーレスよりもむしろロマニリョス的な発音特性で、撥弦における弾性が跳躍する粒のようにして音像化され、さらにそこに箱の容量を自然に活かしたようなふっくらとした奥行きが加わった、ナチュラルで凛とした響き。低音は重心をしっかりと感じさせながら、慎ましくも雄弁な中低音を経てきりっとした高音に至るバランスも心地よく、彫りの深い、室内楽的ともいえる音響は自然にポリフォニックな立体感を生み出しています。音色も魅力的で、バーズアイメイプル特有の真綿のような肌理の音像、そのクラシカルな佇まいがなんとも素晴らしい。必要に応じてダイナミックなうねりを生み出し、スペイン製ならではの迫力も十全に備わっているのでコンサートギターとしてのポテンシャルも高い一本です。 全体はセラックによる繊細な仕上げにより、ヨーロピアンスプルースとバーズアイメイプルの組み合わせによる明るい、ほとんど高貴ともいえる外観を引き立てています。ロゼッタなど非常に凝ったデザインながらあくまでも素材(オーク、メイプル、ウォルナット、ポプラ、レバノンセダー等)そのものの色と模様を活かしたナチュラルな意匠で慎ましくアクセントとなり、オリジナルのヘッドシェイプとその裏側に象嵌されたトレードマークの銀杏の一葉、フステーロ製の糸巻に至るまで美しく統一感のあるルックスはやはり魅力的。 ネック形状は薄いDシェイプですがほとんどラウンドに近いほど角の取れた形状をしており、しかも薄いのでかなり左手はコンパクトに感じます。弦高値は3.6/4.5mm(1弦/6弦 12フレット)と高めですが弦の張りが中庸なのでこのままでも弾きにくさはさほどに感じません、サドル余剰は2.5mmあります。重量は1.43㎏。
定価(税込) : 1,760,000 円
販売価格(税込) :
1,408,000 円
区分
:
輸入クラシック オールド
製作家/商品名
:
ヘルマン・ハウザー1世 Hermann Hauser I
モデル/品番 Model/No.
:
弦長 Scale Length
:
647mm
国 Country
:
ドイツ Germany
製作年 Year
:
1928年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース(GEWA)
備考 Notes
:
ネック:セドロ 指 板:エボニー 塗 装:セラック 糸 巻:ランドスドルファー 弦 高:1弦 3.0mm /6弦 3.6mm [製作家情報] ヘルマン・ハウザー1世 Hermann Hauser I (1882~1952)。その比類ない完成度と以後のギター界全体への影響の大きさにおいて、20世紀最大の製作家とされ、現在もクラシックギター至高のモデルとしてフォロワーの絶えない「セゴビアモデル」を世に出したことで知られるドイツ、ミュンヘンのブランド(のちに現在のライスバッハに移ります)です。 高名なチター奏者、作曲家で製作もした多才な父ヨーゼフ(1854-1939)の影響を受け、18歳のころより自身もチター製作を始めます。ハウザー家が居を構えていたドイツ、バイエルン州のミュンヘンは当時非常にギター文化が盛んであり、ヘルマンはチターだけでなく合奏用ギターやリュート、そして彼の類まれな製作技術を知ることのできる顕著な例として現在でも有名な「ウィンナモデル」や「ミュンヘンモデル」など、父親に負けず劣らず多様で精力的な製作活動を展開しています。この当時まだトーレスから始まるギターの新たな潮流はドイツには入っていませんでしたが、ミゲル・リョベートそしてアンドレス・セゴビアという二人の名手が演奏旅行に訪れたことで、彼らの奏でる音色とともにスペインギターへの文化的需要が急激な高まりをみせます。 ヘルマンは1913年にリョベートに会い、彼の愛器トーレス(おそらく1864年製)に初めて触れ、その構造的革新性と音色の素晴らしさに感動します。そして1916年にもリョベートと再会しその時彼が所有していた1859年製トーレスを仔細に検分する機会を得て本格的にトーレススタイルのスパニッシュギター製作に乗り出します。リョベート自身からも多くのアドバイスを得ていくつもの試作品(と言ってもどれも高度に完成されたものですが)を製作。純粋にトーレスのレプリカに近いものから、それまで自身で作っていた様式とトーレスとを融合したようなものまであり、あるべき音響を求め試行錯誤を繰り返していたことがうかがえます(この時期に製作されたトーレスレプリカのギターは「リョベートモデル」としてのちにハウザー2世、3世によって復刻されます)。 そして1924年、ドイツに演奏旅行で訪れた若き日のアンドレス・セゴビアはヘルマンの製作家としての才能を高く評価し、自身が携えてきた1912年製マヌエル・ラミレス(製作は同工房の職工長サントス・エルナンデス)のギターを見せてレプリカの製作を促します。トーレスを再解釈し、より現代的でクラシック音楽の表現にトータルに応え得るマヌエルのギターにヘルマンは感動し、新たに探求と試作を始めます。それから10年以上の時を経て1936年に完成した一本は、トーレス~マヌエル・ラミレスのスタイルを基本としながらハウザー独自の音響感覚を盛り込み極めて高いバランス精度で全体を仕上げたもので、その未聞の音色の素晴らしさにセゴビアは心から感動し「これ以上のものは作らなくてよい」という有名な言葉で称賛しています。その言葉通り、セゴビアは翌年1937年に製作されたヘルマン・ハウザー1世のギターに持ち替え、1962年まで使い続け数多くの名演を生み出してゆくことになるのですが、これがギター史上至高の名品とされる「セゴビアモデル」で、現在の3世、4世(カトリン・ハウザー)に至るまでこのブランドのフラッグシップモデルとなっています。それはギターの完璧な理想形としてグローバルスタンダード化しており、世界中の製作家によって研究、フォローされ、また現在でもギタリストたちの垂涎のアイテムとなっています。 ハウザー家は戦禍を逃れミュンヘンからライスバッハに工房を写し、戦後も名品を製作。そのレガシーはハウザー2世(1911~1988)に受け継がれ、よりドイツ的なニュアンスを増した逸品を世に出してゆきます。 世界的に有名なオークションではクラシックギターのカテゴリーにおいてトーレス、ロベール・ブーシェと並び最高値で落札されている。 [楽器情報] ヘルマン・ハウザー1世 1928年製の入荷です。1924年のセゴビアとの邂逅、そのわずか4年後に製作されたもので、1937年という絶巓へと向かう確かな足取りとして記憶されるべき逸品です。実際にセゴビア自身が翌年1929年の日本を含むアジアツアーの際に1928年製のハウザー1世をコンサートで使用しており、また後年ジュリアン・ブリームがやはり同年製のものを所有していたことはギターファンにとってのコアなエピソードとなっています。またハウザーはこの時期すべてが必然的に実験であるがゆえにかなり多様な作風で製作していますが、上記のセゴビア、ブリームが所有していたものと本器とはほぼ同様のものとして作られていたと思われます。 ハウザーによるセゴビアモデルはやや図式的にいえばスペイン的音響のドイツ的洗練化といえるもので、これは例えばフランスの名工ロベール・ブーシェがトーレスから出発し自身の(フランス的な)音響へと至る過程とも比較することのできるもので、1928年の段階ではそのスペイン的ニュアンスがまだ濃厚に感じられることが特徴として挙げられます。のちのハウザーのまるで鍵盤楽器のように定位感のしっかりとしたバランス感ではなく、力強くふくよかな低音(まさにBassとしての)とよく歌うクリアな高音(まさに声としての)との対照を軸にした音響設計で、各弦は異なるアイデンティティを際立たせながら、全体に彫りの深い響きを形成していきます。ここでハウザーは響箱の容量を活かしながら、オーディトリアムな奥行きを作り出すのではなく、むしろ箱全体のエネルギーを音に濃縮するようにして濁りのない音響を生み出していることが特筆されます。そしてその音の連なりが、スペイン的なうねりを持った躍動とは異なり、直線のようにして紡がれてゆくことで各旋律が線的な重層性を際立たせているところなどもすでにのちの1930年代の作風の萌芽を感じ取ることができます。さらに特筆すべきは音自体の異様なまでの説得力で、表現楽器としての非常なポテンシャルはやはりこの時点でのドイツギターにおける極点を示していたと言えるでしょう。 表面板力木構造はサウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバーを設置。このうち下側のバーは高音側と低音側それぞれに長さ5cm高さ3mmほどの開口部が設けられており、サウンドホールの両脇には1枚づつ薄い補強板が貼られているのですが、これら補強板が一方の端は上側バーのところでぴったりと接しており、もう一方の端は下側バーの開口部を1cm弱ほどくぐり抜けたところまで伸びています。扇状力木は左右対称7本、これらの先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に配置された二本のクロージングバーという設計。駒板位置に補強板はありません。ここで特徴的なのは下側ハーモニックバーの開口部をサウンドホール脇の補強板が通過するという配置で、通常は(例えばトーレスをはじめとして)扇状力木のほうがこのようなバーの開口部をくぐり抜けてサウンドホール縁まで延伸していることがスタンダードなっています。さらに読み込んでゆけば、ここでハウザーが採用した配置はその後ホセ・ルイス・ロマニリョスの3本のハーモニックバーを垂直に通過する2本+2本の力木構造の基になったハウザーの力木設計へと移行する最初の段階とも見ることができます。レゾナンスはG# の少し下に設定されています。 全体はセラック塗装仕上げ。表面板は高音側低音側ともに指板脇からボトムにかけての広い範囲で数か所の割れ補修歴があります。これはサウンドホール脇部分に一つと駒板下部分に一つの合計2枚だけ内側からパッチ補強されていますがその他の部分はすべて接着のみで補修されており、現状で使用には全く問題ありません。また表面板自体はこの時期に作られたものとしては(割れ等の症状を経たものとしては)歪みや波うち等の症状は最小限にとどまっています。表面板全体に弾きキズ、搔きキズ、打痕等あり、横裏板は右腕や胸の当たる部分 に塗装摩耗見られますがトータル的には年代相応のレベルです。ネック、フレットは良好な状態です。ネックシェイプは普通の厚みのDシェイプ。弦高値は3.0/3.6mm(1弦/6弦 12フレット)、サドル余剰は0.5~1.0mmとなっています。糸巻はLandsdorfer、出荷時のオリジナルのままで、現在も機能的な問題はありません。 Performance video
定価(税込) : 時価
販売価格(税込) :
お問い合わせ下さい。
区分
:
輸入クラシック オールド
製作家/商品名
:
ヘルマン・ハウザー2世 Hermann Hauser II
モデル/品番 Model/No.
:
セゴビアモデル Segovia No.935
弦長 Scale Length
:
646mm
国 Country
:
ドイツ Germany
製作年 Year
:
1973年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース 黒
備考 Notes
:
ネック:マホガニー 指 板:エボニー 塗 装:ラッカー 糸 巻:ライシェル 弦 高:1弦 2.9mm /6弦 4.1mm 〔製作家情報〕 ヘルマン・ハウザー2世 Hermann Hauser II(1911~1988) ハウザーギターは疑いなく20世紀ドイツ最高のギターブランドであり、現在も4代目がその伝統を継承し100年以上にわたって一子相伝で製作を続けている老舗です。ヘルマン・ハウザーI世(1884-1952)が、ミゲル・リョベートが所有していたアントニオ・トーレスとアンドレス・セゴビア所有のマヌエル・ラミレスをベースにして自身のギターを改良し、後にセゴビアモデルと呼ばれることになる「究極の」名モデルを製作した事は良く知られています。それはトーレスがギターの改革を行って以来最大のギター製作史における事件となり、その後のギター演奏と製作との両方に大きな影響を与えることになります。1世の息子ハウザー2世はドイツ屈指の弦楽器製作都市として知られるミッテンヴァルトで4年間ヴァイオリン製作学校で学んだ後、1930年より父の工房で働き始めます。彼ら親子はほぼ共同作業でギターを製作していましたが、ラベルはハウザー1世として出荷されています。1世が亡くなる1952年、彼は正式にこのブランドを受け継ぎ、彼自身のラベルによる最初のラベル(No.500)を製作。以来1983年に引退するまで極めて旺盛な活動をし、500本以上のギターを出荷しています。 ハウザー2世もまた父親同様に名手たち(セゴビア、ジュリアン・ブリーム、ペペ・ロメロ等)との交流から自身の製作哲学を熟成させていったところがあり、また彼自身の資質であろうドイツ的な音響指向をより明確化することで、1世とはまた異なるニュアンスを持つ名品を数多く世に出しました。有名なところではなんといってもブリームが愛用した1957年製のギターですが、その音響は1世以上に透徹さを極め、すべての単音の完璧なバランスの中にクラシカルな気品を纏わせたもので、ストイックさと抒情とを併せもった唯一無二のギターとなっています。 1970年代以降の彼は特にその独創性において注目されるべきペペ・ロメロモデルや、おそらくは急速に拡大した需要への柔軟な姿勢としてそれまでには採用していなかった仕様での製作も多く手がけるようになりますが、やはり完成度の高さの点では1世より引き継いだ「セゴビア」モデルが抜きんでています。その後1980年代からモダンギターの潮流が新たなスタンダードと目されていく中でも、ハウザーギターは究極のモデルとしての価値を全く減ずることなく、現在においてもマーケットでは最高値で取引されるブランドの一つとなっています。 1974年からは息子のハウザー3世(1958~)が工房に加わりおよそ10年間製作をともにします。3世もまた2世のエッセンスに独自の嗜好を加味しながら、ブランドの名に恥じぬ極めて高度な完成度を有したモデルを製作し続けています。 [楽器情報] ヘルマン・ハウザー2世製作 1973年製 セゴビアモデル No.935 Usedの入荷です。外観上は1世より続くこのモデルのデザインを踏襲していますが、表面板力木配置をはじめとする内部構造は1960年代後半以降に定式化した、2世により若干の改編が加えられた設計によって作られています。 本器の力木設計はサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、両脇に一枚ずつの薄い補強板を設置。この上下のバーは上側の方は真っ直ぐなバーですが、下側のものはちょうど中央でわずかに屈折しており、高音側低音側ともにややネック方向寄りのところで横板と接しています。扇状力木は左右対称7本、ボトム部のクロージングバーはなく、7本ともほぼボトムに到達する位置まで伸びています。駒板位置にはほぼ同じ面積で薄い補強板が貼られています。このネック側に向かって屈折したハーモニックバーと、ボトム部にクロージングバー(通常は2本、扇状力木の先端を受け止めるようV字または逆ハの字型に配置されている)を設置していない設計は2世独自のもので、表面板下部の振動領域を低音高音側ともに広くとっているのですが、この発想は実はクラシックギターではむしろ珍しい。レゾナンスはAの少し下に設定されています。 撥弦と発音がほぼ完全に同一化したような速い反応で、ハウザーとしてはやや粘りを抑えた発音から上品な艶を湛えた音像が現れ、旋律は粒立ちの良い点の列のように音が連なってゆき、その凛とした響きがなんとも清々しく心地良い。高めのレゾナンスのせいか低音はその重心をしっかりと感じさせながらもむしろすっきりとしており、高音が自然に前景化するような音響設計、そのためかハウザーとしては明るく、軽快ささえ感じさせる全体の響きなっています。とはいえ必要に応じて力強く十全に鳴り、ストイックな相貌のなかに多様な表情を含蓄した音などいかにもクラシカルで、表現楽器としての高いポテンシャルを有しています。 出荷時オリジナルのラッカー塗装で、全体に細かなウェザーチェック(ひび割れ)を生じていますが塗装の性質に由来する経年の自然変化ですので現状で全く問題ありません。そのた軽微な弾きキズや数か所にちいさな打痕、駒板下部分に弦交換時のキズが少々あります。横裏板は演奏時に胸の当たる部分などボタン等衣服による摩擦やスクラッチあとがありますが、製作年を考慮しますと総体的に良好な状態と言えます。ネックはわずかに順反りですが標準設定の範囲内、フレットは1~7フレットでやや摩耗見られますが現状で演奏性に問題ありません。ネックシェイプはやや薄めのDシェイプ、弦高値は2.9/4.1mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0~1.5mmあります。重量は1.55㎏。
定価(税込) : 時価
販売価格(税込) :
4,950,000 円
区分
:
輸入クラシック オールド
製作家/商品名
:
アルカンヘル・フェルナンデス Arcangel Fernandez
モデル/品番 Model/No.
:
弦長 Scale Length
:
656mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
1969年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
シープレス Solid Cypress
付属品 Option
:
ハードケース
備考 Notes
:
ネック:セドロ 指 板:エボニー 塗 装:セラック 糸 巻:フステーロ 弦 高:1弦 2.9mm /6弦 4.2mm [製作家情報] アルカンヘル・フェルナンデス Arcangel Fernandez 1931年スペイン、マドリッド生まれ。 マヌエル・ラミレス、サントス・エルナンデスから続くマドリッド派の哲学を真に継承し、頑ななまでにそれを護り通したほとんど唯一の職人であり、その芸術性においても極点を示した20世紀後半のスペインを代表する製作家です。 少年時代は映画俳優志望で実際に数本の映画にも出演、13歳になると家具職人として働くことになり、同時にフラメンコギターの演奏も始めるようになります。かなりの腕前だった彼は兵役後プロギタリストとしての道をまずは模索しますが、1954年に当時サントス・エルナンデス(1874~1943)の後継者とされていたマルセロ・バルベロ1世(1904~1956)の知己を得てその工房に足繁く通うようになると、この名工のすすめ(というよりバルベロ自身の希望もあって)で弟子となりギター製作を学ぶことになります。アルカンヘルは師の作るギターに強い興味を抱くようになり、持ち前の探求心で加速度的に製作の腕前を上げ瞬く間に職人として成長してゆきますが、バルベロは1956年に52歳の若さで他界してしまいます。わずか2年間に学んだことを糧に、唯一の弟子であったアルカンヘルはバルベロの残された注文分のギターをすべて製作した後、1957年に師の工房の近くヘスス・イ・マリア通りに工房を設立し、自身のブランドをスタートさせます。この創業時からアルカンヘルの職人としての充実度はすさまじいほどで、造作と音響の両方において若さゆえの甘さなどみじんもなく、透徹した精神が隅々まで行き渡った名品を作り出します。 1960年代に入るとバルベロ1世の息子マルセロ・バルベロ・イーホ(1943~2005)がスタッフに加わり、同じ工房でそれぞれが製作を担当するシステムを確立します。アルカンヘル自身のラベルによるものはクラシック、フラメンコそれぞれ一貫してワンモデルのみを製作。それ以外には工房品(「Para Casa Arcangel Fernandez」ラベル)としてバルベロ・イーホやマヌエル・カセレス、ペドロ・バルブエナらが製作を担当しての出荷もしています。この「アルカンヘル工房品」として出荷されたものも完全手工品であり(ラベルには担当製作者の個人名がプリントされています)、極めて高いクオリティのもので評価も高く、現在中古市場でも人気のアイテムとなっています。 アルカンヘルの造作、木材の選定、そしてなによりも音響に対する一切の妥協を排した製作姿勢は彼の人柄もあいまって孤高の趣を呈し、楽器はそのあまりの完成度の高さゆえに、演奏者に非常な技術の洗練を要求するものとなっております。それゆえにこそ多くのギタリストを刺激し続けている稀有なブランドですが、2011年に製作を引退。現在ではますます稀少となっている名ブランドの一つです。 [楽器情報] アルカンヘル・フェルナンデス 1969年製のフラメンコ ブランカモデル Usedの入荷です。過去にセラックによる再塗装が施され、その際に表面板のゴルペ板は剥がされており、長らくクラシック用として使用されてきたモデルです。表面板の指板両脇に割れ補修歴(内側からパッチ補強されています)がありますが、その他は全体にキズも歪みも少なく、現状はとても良好な状態です。 フラメンコブランカの特性的な明るく乾いた響きですが、決して軽くはなく、アルカンヘルならではの充実した密度が発音から終止まで持続する音像、そのあくまで凛とした表情が素晴らしい。レゾナンスがEのさらに下という低い設定の、その重心の「揺るぎのない」感覚も全体をきりっと引き締め、低音の重厚さから高音の清冽さへと至るバランスもさすが。音圧の非常な高さ(あくまでも自然な佇まいを失わず)とその迫力も十分で、あくまでもストイックな音色の中に豊かな叙情性を内包しているところもいかにも彼らしい。そしてフラメンコモデルとしての機能性(発音の反応、各音の分離、旋律的身振り等々)も申し分ありません。上記のような楽器としての機能性はクラシックでも十全に適用することができるもので、演奏する曲の情趣や趣向に合わせて使用することも可能です。 表面板内部構造はサウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に各一本のハーモニックバー、そして左右対称5本のそれぞれが太く厚めに加工された扇状力木が中央に寄り添うように(ブリッジプレートの幅に収まるように)配置され、それらの先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板の位置には薄いパッチ板が貼られているという全体の配置。レゾナンスはEの下に設定されています。2本のクロージングバーの中央角に個体によって変化はありますが、これはアルカンヘルがフラメンコモデルで採用した基本構造となっています。 ネック、フレットなどの演奏性に関わる部分は良好な状態を維持しています。ネック形状は薄めで丸みのあるDシェイプでフラメンコモデルらしいコンパクトなグリップ感。弦高値はクラシック仕様となっており2.9/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は2.0~3.0mmあります。ネック差し込み角等も適切ですので弦高値はフラメンコ仕様に設定することももちろん可能です。スペインの老舗ブランドでアルカンヘルの標準仕様であるフステーロ製の糸巻(ラミレスモデル)が装着されていますが、ハープ型の先端部分がヘッド木部のサイズに合わせて少しだけ切り取られた形で装着されています。また3弦と4弦つまみの遊びが大きく、調弦自体に問題はありませんが、やや操作の面で難があります。重量は1.26㎏。ブランド名のプレートが装着されたハードケース付き。
定価(税込) : 時価
販売価格(税込) :
お問い合わせ下さい。
区分
:
輸入クラシック オールド
製作家/商品名
:
アルカンヘル・フェルナンデス Arcangel Fernandez
モデル/品番 Model/No.
:
弦長 Scale Length
:
655mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
1971年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース 黒
備考 Notes
:
ネック:セドロ 指 板:エボニー 塗 装:ポリウレタン 糸 巻:フステーロ 弦 高:1弦 3.0mm /6弦 4.0mm [製作家情報] アルカンヘル・フェルナンデス Arcangel Fernandez 1931年スペイン、マドリッド生まれ。 マヌエル・ラミレス、サントス・エルナンデスから続くマドリッド派の哲学を真に継承し、頑ななまでにそれを護り通したほとんど唯一の職人であり、その芸術性においても極点を示した20世紀後半のスペインを代表する製作家です。 少年時代は映画俳優志望で実際に数本の映画にも出演、13歳になると家具職人として働くことになり、同時にフラメンコギターの演奏も始めるようになります。かなりの腕前だった彼は兵役後プロギタリストとしての道をまずは模索しますが、1954年に当時サントス・エルナンデス(1874~1943)の後継者とされていたマルセロ・バルベロ1世(1904~1956)の知己を得てその工房に足繁く通うようになると、この名工のすすめ(というよりバルベロ自身の希望もあって)で弟子となりギター製作を学ぶことになります。アルカンヘルは師の作るギターに強い興味を抱くようになり、持ち前の探求心で加速度的に製作の腕前を上げ瞬く間に職人として成長してゆきますが、バルベロは1956年に52歳の若さで他界してしまいます。わずか2年間に学んだことを糧に、唯一の弟子であったアルカンヘルはバルベロの残された注文分のギターをすべて製作した後、1957年に師の工房の近くヘスス・イ・マリア通りに工房を設立し、自身のブランドをスタートさせます。この創業時からアルカンヘルの職人としての充実度はすさまじいほどで、造作と音響の両方において若さゆえの甘さなどみじんもなく、透徹した精神が隅々まで行き渡った名品を作り出します。 1960年代に入るとバルベロ1世の息子マルセロ・バルベロ・イーホ(1943~2005)がスタッフに加わり、同じ工房でそれぞれが製作を担当するシステムを確立します。アルカンヘル自身のラベルによるものはクラシック、フラメンコそれぞれ一貫してワンモデルのみを製作。それ以外には工房品(「Para Casa Arcangel Fernandez」ラベル)としてバルベロ・イーホやマヌエル・カセレス、ペドロ・バルブエナらが製作を担当しての出荷もしています。この「アルカンヘル工房品」として出荷されたものも完全手工品であり(ラベルには担当製作者の個人名がプリントされています)、極めて高いクオリティのもので評価も高く、現在中古市場でも人気のアイテムとなっています。 アルカンヘルの造作、木材の選定、そしてなによりも音響に対する一切の妥協を排した製作姿勢は彼の人柄もあいまって孤高の趣を呈し、楽器はそのあまりの完成度の高さゆえに、演奏者に非常な技術の洗練を要求するものとなっております。それゆえにこそ多くのギタリストを刺激し続けている稀有なブランドですが、2011年に製作を引退。現在ではますます稀少となっている名ブランドの一つです。 [楽器情報] アルカンヘル・フェルナンデス 1971年製 クラシックモデル Usedの入荷です。ポリウレタンの塗装でやや濃い目のオレンジ着色がされた松の表面板などの外観的仕様は同じスペイン、マドリッドで当時マーケットを席巻していたホセ・ラミレスの影響が見て取れ(実際にアルカンヘルは’Para Casa Arcangel’ ラベルで同じ工房のマルセロ・バルベロ・イーホをはじめ、マヌエル・カセレスやペドロ・バルブエナなどラミレス工房での優秀な職人を採用して工房品の拡販を行っていたなどマーケティング戦略的にもかなり共通する部分、というかアルカンヘル本人のラミレスへの目くばせを強く感じさせるところが多くあります)、同時に内部構造においても彼の定石となっている力木構造(師マルセロ・バルベロ1世から受け継いだもの)とは異なるものが本作では採用されています。横裏板はブラジリアン・ローズウッド仕様ですが、アルカンヘルがクラシックモデルの基本仕様として設定していたブラジリアン・ローズウッドは彼自身の厳しい選定を経たどれも極上のもので、本作のブラジリアンもやはり素晴らしく良質なものがセレクトされています。 アルカンヘルの力木配置は基本6本(フラメンコは5本)の表面板のセンターに寄り添うようにして配置された強固な扇状力木と広く間をあけたクロージングバーで、これがあの独特の強い粘りと比類ない密度を持った発音につながってゆくのですが、本作では扇状力木は左右対称7本が設置され、その一本一本はサイズもおよそ半分になっています。ボトム部にはこれらの先端を受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置にはほぼ横幅いっぱいに設置された薄い補強板で、これらの部品もやはり厚みなどのサイズを小さくしたものを設置しています。サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)のハーモニックバーは各一本が設置され、こちらは本数もサイズも通常通りの仕様となっています。レゾナンスはGの少し上に設定されています。 アルカンヘルらしい、音圧のあくまでも自然な高さとその迫力、「揺るぎない」重心設定と低音~中低音~高音の自然で完璧なバランスがまずは見事。やや強めの粘りと反発感をもった発音は撥弦の瞬間に充実し整った音像となって現れ、その点としての持続の濃密さゆえに旋律が実にすっきりと、しかし有機的に線としてのうねりを生み出してゆきます。響箱が十全に鳴っていますが余計なエコー感はなく、そしてそれゆえに和音や多声メロディーにおける各音各声部のアイデンティが際立ち、それが上述の完璧な音響バランスの中で表れてくるので、奏者の楽曲の和声的な構築と彫りの深い表現の要求に十全に応えてくれます(これはアルカンヘルのギターすべてに共通する音響機能的特徴だと言えます)。決して華美に過ぎず渋めの音色ですが、その繊細な変化の中にスペインギターならではの叙情がたっぷりと聴かれる(表現できる)ところがなんとも心憎い。 先述の構造的な相違からか、本作ではアルカンヘルの、あのあまりの適切さゆえに一切の妥協を排したようなストイックな厳しさとは趣を異にして、音像にはやや角の取れたふっくらとした触感があり、発音における反発感も比較的に軽めなものなので、どこか柔和な優しさを感じさせる魅力的な一本となっています。 割れなどの大きな修理履歴はありません。表面板は指板両脇やボトム付近に打痕やスクラッチ痕が数か所あります。駒板下部分に保護シートの脱着跡がかすかに残っています。横裏板は演奏時の衣服による摩擦あとがわずかに見られるほか、胸の当たるエリアに保護シートの脱着跡がかすかに残っていますが外観を損ねるほどではありません。ネック裏は全体に若干の塗装の擦れがあり一部に剥がれがありますが問題のないレベルと言えます。ネックはとても良好な状態を維持しています。フレットは1~7フレット(特に1~2フレット)で摩耗見られますが現状では演奏性に影響はなく継続しての使用に問題はありません。ネック形状はDシェイプのやや薄めのフラットな形状でコンパクトなグリップ感。弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は2.0~3.0mmありますのでお好みに応じてさらに弦高を低くすることも可能です。重量は1.65㎏。 表面板のちょうど1弦12~19フレットの真下部分にはスリットが入れてありますが(指板の下に隠れた部分なので表からは見えません)、これは指板と表面板が接するエリアの木の伸縮による割れ防止のために製作時に意図的に処理されたもので、出荷後に生じたものではありません。
定価(税込) : 時価
販売価格(税込) :
4,400,000 円
区分
:
輸入クラシック オールド
製作家/商品名
:
ヘルムート・ブッフシュタイナー Helmut Buchsteiner
モデル/品番 Model/No.
:
B-10 No.641
弦長 Scale Length
:
650mm
国 Country
:
ドイツ Germany
製作年 Year
:
2003年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース黒
備考 Notes
:
ネック:マホガニー 指 板:エボニー 塗 装:ラッカー 糸 巻:エバルド 弦 高:1弦 3.0mm/6弦 3.8mm 〔製作家情報〕 ヘルムート・ブッフシュタイナー Helmut Buchsteiner 1940年オーストリア、グラーツ生まれ。1954年から弦楽器製作家のJakob Doriathのもとで修行を始め、めきめきと頭角をあらわすようになり、1957年にはジャーニーマン(徒弟制度を終了した職人)としての資格を得ます。この時期オーストリアのRosmeizel、ドイツの老舗メーカー Roger などに職人として働き、主にジャズギターの製作に従事していますが、ここでクラシックギターも製作も始めています。1961年には弦楽器、打楽器のマイスター称号を取得。1962年から2年間にイギリスに渡りエレキ、アコースティックギターの製作に従事、そして1964年から1966年までアメリカのニューヨークやシカゴでギターと弦楽器マスタービルダーとして現地のブランドと共同製作や修理に携わるようになります。1966年ドイツに帰国後はGIMA/Voss 社の工場長に就任し、主にアーチトップギターなどを製作。1968年には渡米前に働いていたノイマルクトの Roger工房を借りて自ら会社を設立しますが、最初は主に卸売り中心だったようです。1969年ごろからこの会社が経営をクラシックギターを含む多様なラインナップの製作と卸売りを行うブランド(b-ton)へと経営を拡大してゆき、その後は後進を育てながらクラシック、エレキ、アコースティック、弦楽器、古楽器など実に多様なジャンルで製作を続け、数々の賞を受賞。1985年には東京で世界の最もすぐれた10人の弦楽器製作者に選ばれるなど、その精緻極まる工作精度とバランスの良い音響は国際的な名声を獲得してゆきます。1989年からドイツ、ミッテンヴァルトにてヴァイオリン製作学校にて教鞭を執り、1992年からはオーストリア北部ハルスタットに移り、ハルシュタット大学木工芸科で教鞭をとる傍ら製作。 1980年代中頃に工房での不慮の事故で左手の指先を欠損してからは自身の製作本数は限定的になるものの、継続してすぐれた仕事を行っていましたが2010年に工房を閉鎖します。 そのキャリアにおいて、弦楽器、撥弦楽器の実に広範囲にわたる旺盛な製作を展開しており、ジャンルに応じて優秀な弟子たちを輩出した製作家ですが、クラシックではヘルマン・ハウザー3世、フリッツ・オベール、エドムンド・ブロヒンガーらがいます。 〔楽器情報〕 ヘルムート・ブッフシュタイナー モデル B10 2003年製 No.641 状態良好のUsed 入荷です。彼のクラシックモデルとしては楕円形のサウンドホールが印象的な「ワイスガーバーモデル」と並び、よく知られ、そして最も流通したモデルの一つ。ワイスガーバーの構造的多様性を目の当たりにし、アコースティックギター製作の経験を通して培われた彼の独創的な発想は本器においても発揮されています。外観は極めてオーソドックスで、ある種ドイツ的な厳格さによって堅実にまとめあげられたものですが、内部の表面板力木配置において大胆な非対称性を取り入れた設計を行っており、それはクラシックギターの製作では現在でも個性的なものとなっています。 サウンドホール上側(ネック側)に1本のハーモニックバー、そして下側は2本のハーモニックバーがやや高音側に寄った位置でX状に交差しており、しかもそれぞれのバーは片方が細く高い切妻型でもう片方が低く幅のある山型で加工されています。さらにこの2本が交差する箇所は切妻型のバーに開口部が設けられ、山型のバーがそこをくぐり抜ける方式で、お互いの長さも異なります(つまり2本のバーそれぞれの始点と終点の位置もまた左右非対称になっています)。ボディ下部は5本の扇状力木がちょうど表面板のセンターに設置された一本を境にして高音側に3本、低音側に1本、それぞれの間隔も角度も不均等に配置されています。ブリッジ位置には駒板とほぼ同じ幅の補強プレートが一番高音側の扇状力木と上記のX状に交差するバー下端部分との間にぴったりと収まるように貼られています。その他も低音側のみに一か所短い力木がX状バーと横板とを繋ぐように設置されていたりと徹底した精緻さが細部まで見て取れます。表面板と横板との接合部分にはペオネス(木製の小型ブロック状のものを並べてゆくようにして設置する)ではなく、接ぎのないライニングを設置。レゾナンスはAの少し上に設定されています。 計算された物理的プロセスによりボディ振動から音が精製されたような、木質の生々しさよりもほとんど金属的なまでの洗練が聴かれるのですが、音楽的な表情は不思議なまでに豊かなものがあります。発音の反応も早く、タッチと同時に瞬間的に整った音像が現れるいかにもドイツ的な機能性は心地よく、左手のスラーやスタッカートなどの反応もまた鋭敏なので、音楽は自然に輪郭のくっきりとしたものになります。あえてハウザーとの比較で言えば(彼は3世に製作の手ほどきもしているので)、ハウザー的発音における高い硬度と弾性との絶妙な案配が生み出す濃密なうねりに対し、ブッフシュタイナーの本モデルにおいては直線的な音響が特徴となっており、より鍵盤的なメカニズムが際立つ楽器となっています。 製作から20年以上を経た楽器としてはとても良好な状態で美品と言えるレベル。表面板は軽微なキズがわずかに数か所のみで横裏板は衣服による細かな摩擦あとのみとなっています。ネック、フレットも良好な状態。ネックシェイプは普通の厚みのDシェイプ、弦高値は3.0/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は1.0~2.0mmありますのでお好みに応じてさらに低く調整することも可能です。糸巻はドイツ製のエバルドを装着、現状で機能的な問題はありません。 Performance video
定価(税込) : 時価
販売価格(税込) :
495,000 円
区分
:
輸入クラシック 中古
製作家/商品名
:
ビセンテ・カリージョ Vicente Carrillo
モデル/品番 Model/No.
:
インディア エステューディオ INDIA ESTUDIO
弦長 Scale Length
:
650mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
2008年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option
:
スーパーライトケース
備考 Notes
:
ネック:セドロ 指 板:エボニー 塗 装:ポリウレタン 糸 巻:ゴトー 弦 高:1弦 3.2mm/6弦 3.8mm 〔製作家情報〕 1744年より代々続くギター製作の家系に生まれた当代ヴィセンテ・カリージョ Vicente Carrillo(1963~)は、著名なギタリストや弦楽器職人のアドバイスを積極的に取り入れると共に、精力的にその楽器の紹介にも取り組み2010年にはスペインの工芸家技術賞を獲得しています。良質なクラシックギターも製作していますが、特に彼のフラメンコギターは愛好者が多く、パコ・デ・ルシアやトマティートも所有していることで知られています。近年は名手カニサレスなどの使用によりますます世界的にシェアを拡大しているスペイン、クエンカの老舗ブランドです。 〔楽器情報〕 ヴィセンテ・カリージョ製作 インディア・エステューディオ 2008年製 Used の入荷です。表面板はドイツ松、横裏板はインディアンローズウッド仕様のクラシックモデル。Estudioの名の通り「入門モデル」と位置づけられるもので、その機能性(音量の豊かさ、発音における反応の速さ)や演奏性(左手のグリップ感、弦のテンション感覚)において、アーティストからの厳しいフィードバックやモダンスタイルの設計なども柔軟に取り込みバランスフルな一本にまとめてしまう力量も持つ彼だけに、他のブランドの追従を許さぬような「ちょうど良い」着地点が見極められており、実に弾き心地のよいギターとなっています。加えていかにもスペイン的な明朗な響きも自然に備わっており、どのジャンルの音楽にも対応できるスタンダードな音色もまたこのブランドらしい。 カニサレスモデルなどでは格子状の力木構造を採用するなど現代的なアプローチもしていましたが、本作ではスタンダードな扇状力木の設計になっています。サウンドホール上下(ネック側とブリッジ側)に1本ずつのハーモニックバー、このうち下側の方のバーの中央部から高音側横板に向かって斜めに下がってゆくように設置された1本のトレブルバー的な力木と、これとは別に扇状に配置された5本の力木、ボトム部でこれらの先端を受け止めるようにハの字型に配置された2本のクロージングバーという全体の設計、レゾナンスはF#~Gの合い札に設定されています。 割れ等の大きな修理や改造歴はありません。表面板は高音側の指板脇からサウンドホールにかけて、ボトム部分の縁に沿って低音側~高音側まで弾き傷や打痕が見られます。また駒板下には1弦と3弦部分に弦飛び跡があるほか全弦のエリアで弦交換時のキズがあります。横裏板は全体に衣服による細かな摩擦跡やスクラッチ痕があり、また塗装は湿度の影響などによりやや白化していますが継続しての使用には問題ありません。ネックはほんのわずかに順反りですが標準設定の範囲内、ネック形状は薄めのDシェイプでフラットな設定になっておりコンパクトなグリップ感。弦高値は3.2/3.8mm(1弦/6弦 12フレット)でサドル余剰は2.0~2.5mmあります。スーパーライトケース(ブラック)付属。
定価(税込) : 時価
販売価格(税込) :
198,000 円
区分
:
輸入クラシック 中古
製作家/商品名
:
ステファン・コナー Stephan Connor
モデル/品番 Model/No.
:
No.514
弦長 Scale Length
:
640mm
国 Country
:
アメリカ U.S.A
製作年 Year
:
2025年
表板 Top
:
杉 Solid Ceder
横裏板 Back & Sides
:
インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース
備考 Notes
:
ネック:マホガニー 指 板:エボニー 塗 装:表板 セラック /横裏板 ラッカー 糸 巻:ピンウェル 弦 高:1弦 2.8mm /6弦 4.0mm [製作家情報] アメリカ・マサチューセッツ州ケープコッドを拠点に活動するクラシックギター製作家。1994年より最高品質の素材を用い、演奏会レベルのクラシックギター製作を専門とする。スペイン伝統の美意識を基盤にしつつ、ラティス・ブレイシング、レイズド・フィンガーボード、サウンドポートなどの革新技術を取り入れた独自の設計を確立。豊かな音量と深みのある表現力で、世界の名演奏家たちから高い評価を受けている。 エリオット・フィスク、アサド兄弟、スコット・テナント、アナベル・モンテシノス、マルコ・タマヨ、アンヘル・ロメロら、国際的な演奏家たちが彼のギターを愛用。世界各地から自ら厳選したトーンウッドを使用し、工房にて長年にわたり自然乾燥・熟成させるなど、音響と美観の両面において徹底した品質追求を行っている。 [楽器情報] アメリカ・マサチューセッツ州ケープコッドを拠点に、世界的な評価を誇るクラシックギター製作家ステファン・コナー氏による、貴重な2025年製の中古ギター(シリアルNo.514)が入荷いたしました。 Connor氏は、伝統的なスペインギターの美学と最先端の音響工学を融合させた設計で知られ、多くの国際的演奏家から絶大な支持を集めています。ラティス・ブレイシング構造やレイズド・フィンガーボード、サウンドポートなどの革新的な要素を採用しながら、音の深みと表現力を最大限に引き出す製作技術が光る一本です。 外観にはわずかな使用感・小傷が見受けられますが、全体として良好なコンディションを保っており、演奏面でも非常に安定しています。音の立ち上がりも良く、サロンからホールまで幅広いシーンで力を発揮してくれる1本です。
定価(税込) : 時価
販売価格(税込) :
2,750,000 円
区分
:
輸入クラシック 中古
製作家/商品名
:
ペール・ハルグレン Per Hallgren
モデル/品番 Model/No.
:
オリジナルモデル No.281
弦長 Scale Length
:
650mm
国 Country
:
スウェーデン Sweden
製作年 Year
:
2021年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース(HISCOX)
備考 Notes
:
ネック:セドロ 指 板:エボニー 塗 装:セラック 糸 巻:シェラー 弦 高:1弦 2.9mm /6弦 4.0mm [製作家情報] ペール・ハルグレンPer Hallgren スウェーデンの製作家。1986年より製作を始める。当時スウェーデンでは楽器製作に関する公的な教育機関がなく、ペール氏曰く「あまり上質ではない」ギターメーカーから情報をえるのがやっとというような環境であったため、ほぼ製作ガイドブックなどを頼りに独学で製作を学んでいました。1990年代にカーディフ大学のベルナール・リチャードソン博士の知遇を得て、特にギターの音響学に就いての博士の膨大な研究成果を実地に学ぶ機会を得たことが、彼の最大の契機となります。もともとスペインのトーレスから始まる伝統的な工法に深く傾倒していた彼ですが、そこに現代のテクノロジーを用いての科学的なアプローチ、同国のすぐれたギタリストたちの交流と頻繁な意見交換による実践的なデータの収集、そして彼独自のセンスによって新たな音響として帰結させており、それはスペイン的伝統が北欧の感性風土のなかで洗練、再構築されたかのような鮮烈さまとったものとなっています。また外観的にも細部まで精緻を極めた造作と洒落た意匠(ヘッドシェイプ、ロゼッタ、ラベル等々)、セラックニスの繊細な仕上げはどれも特筆すべきもので、上記のデザインには彼が愛するスペインギターの巨匠たちへのオマージュと同時に、北欧独自の歴史的な意匠などが盛り込まれ、非常に美しいものとなっています。 スウェーデン国外にはこれまで出荷されたことがなく、ヨーロッパにおいても「知られざる名工」となっていた彼ですが、同国のギタリスト、イヨラン・セルシェルが近年コンサートギターとして使用し、またMartin Fogel氏やPer-Olov Kindgren氏などのギタリストたちが彼のギターを称賛していることからようやくその名が注目を集め始めています。 [楽器情報] ペール・ハルグレン 2021年製 No.281 Usedの入荷です。 伝統的なスタイルと科学的なアプローチ、そして彼自身の北欧的な感性によって仕上げられた、清爽な力強さに満ちた一本。ベルナール・リチャードソン博士による音響学研究が彼のキャリア初期において道標となったことは自身によって語られるところですが、そのリチャードソンもまた、楽器にとっての良い音響とは最後は感性的な判断によって決定的となるとハルグレン氏に強くアドバイスしていることは興味深く、特別な示唆に満ちていると言うべきでしょう。そして実際に氏は楽器を成形し弦を張った段階で、塗装による仕上げを行う前におよそ数か月をかけて自ら試奏し、楽器のフィジカルな反応に極限まで自身の感性を研ぎ澄ませながら構造部分への最終的な精錬を行うのだとのこと。 結果完成したそのモデルは、緻密に構築された音響バランス、繊細さ、力強さ、身振りと表情、そのそれぞれの幅広く豊かな振幅を備えたものとなっており、深く伝統的で、そして完全に新しい。例えばスペインギターにおける、各音の微妙な凹凸感が全体に独特の響きの肌理やパースペクティブ(高音のメロディの前景化など)を生み出すのに対し、ここでハルグレン氏が構築しているのはすべての音が等しく前景化するようなプロジェクションを持ちながら、各声部がその明確な彫塑性によって声部ごとのアイデンティティを明確化しているような音響で、言いかえれば歌と伴奏がそれぞれ同じ強度を持っているのにお互いに抵触することのないような、その意味で極めて(モダンギターの方向性とは全く異なる)現代的なフェイズ感を持った音響設計となっています。 内部構造も基本的にスペイン伝統工法をベースとした扇状力木配置。しかしそのそれぞれの配置関係は独特のもので、それぞれの間隔、角度、長さが微妙に異なる上、サウンドホール下のハーモニックバーの微妙な傾斜、ボトム部のクロージングバーが高音側に一本のみ配されしかも着地点がボトム中央ではなく低音側にやや寄った位置になっているなど全体に細かに計算された左右非対称の配置。更には裏板のバーに関しても通常の3本のバーの他、ラディアル状(放射状)配置された力木が別に設置されており、その一部がバーをトンネル状に貫通し交差しています。レゾナンスはG#の少し下に設定されています。 全面セラック塗装の極めて美しい仕上げで、ロゼッタは北欧の伝統的な意匠をモチーフにしたものだとのこと。ネックはややラウンドがかかったDシェイプタイプ。糸巻きはドイツの高級糸巻きシェラー社製を装着。表面板に数か所の軽微な弾きキズが見られるほかはわずかに衣服等の擦れあとがみられるのみで、大変に良好な状態です。HISCOX ハードケース付属。
定価(税込) : 時価
販売価格(税込) :
880,000 円
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