[製作家情報] アントニオ・ラジャ・フェレール Antonio Raya Ferrer 1980年 スペイン、グラナダの生まれ。現在も同地に工房を構え製作を行っています。父は同地を代表する製作家の一人として日本でも人気のあったアントニオ・ラジャ・パルド(1950~2022)、そして母ピラール・フェレールは現在のグラナダ派形成の最重要人物ともいえるエドゥアルド・フェレール(1905~1988)の孫娘であり、彼は物心つく前からこの二人の名工が工房で製作する姿を見ながら育ったといいます。14歳の頃より父の工房で働き始め、17歳の時には自身のラベルで製作を開始。父親そしてグラナダの伝統に最大限の敬意を払いながら慎ましくその継承者としての任を自覚している誠実な彼は、父親同様にどこか柔和で素朴な作風が魅力的なブランドとして出発し、そして現在彼自身の成熟ゆえの帰結として、音響的そして造作精度的に高度の洗練を成し遂げた俊秀としての位置を確立するに至っています。
自身のラベルによるものはクラシック、フラメンコそれぞれ一貫してワンモデルのみを製作。それ以外には工房品(「Para Casa Arcangel Fernandez」ラベル)としてバルベロ・イーホやマヌエル・カセレスらが製作を担当して出荷もしています。この二人はそれぞれ自身のオリジナルラベルでの製作も行っていますが、アルカンヘル工房品として出荷されたものも完全手工品として(ラベルには製作者の名前が明記されています)極めて高いクオリティのもので評価も高く、現在中古市場でも人気のアイテムとなっています。
[製作家情報] ホセ・ヤコピ Jose Yacopi(1916~2006)。スペインのビトリア生まれ。父親のガマリエル・ヤコピの工房に入り、18歳の時に最初のギターを製作しています。1949年には家族でアルゼンチンのブエノス・アイレスにほど近いサン・フェルナンドに移り住んで工房を開き、そこで生涯ギターを作り続けました。最初は父親と同様にアントニオ・デ・トーレスを規範とした伝統的なスペインギターを製作していましたが、移住する直前の1947年ごろから父親と共に発案した、通常とは逆方向に放射状に配置された扇状力木構造を採用するようになり、これがこのブランドの特徴となります。本国アルゼンチンではその需要の増大に対応するために工房品含め年間約300本のギターを出荷していた時期もありますが、最上位モデルはその1割ほどで、良質な材を使用して本人が製作しています。