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輸入クラシック 中古
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製作家/商品名
:
ゲルハルト・オルディゲス Gerhard Oldiges
モデル/品番 Model/No.
:
‛La Cincuenta y Tres
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
652mm
国 Country
:
ドイツ Germany
製作年 Year
:
2008年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option
:
軽量ケース
備考 Notes
:
ネック:セドロ
指 板:黒檀
塗 装:セラック
糸 巻:ロジャース
弦 高:1弦 3.2mm/6弦 4.0mm
〔製作家情報〕
1955年ドイツ生まれ。大学卒業後にギターやリュートなど幾つかの工房で修業を重ねたのち、1985年にマイスター制度による国家試験に合格しゲゼレを取得、1986年に創設当初のLakewood Guitars のリペア部門で働くことになります。1988年にベルギーで開催されたホセ・ルイス・ロマニリョス(1932~2022)のギター製作セミナーに参加し、この名工から彼のその後の方向性を決定づけるほどの影響を受けることになります。1989年には再び国家試験に合格しマイスターの称号を得るとともに、自身の工房を設立。
ロマニリョスとは師弟として、そして良き友人としてその後も関係は続き、スペイン、シグエンサで開催された講習会ではトビアス・ブラウンらとともに助手を務めています(この講習会には尾野薫、田邊雅啓、中野潤らが参加している)。また彼の畢生の名著と言える「アントニオ・デ・トーレス その生涯と作品」のドイツ語訳を刊行するなどギター文化を拡げてゆくためのアクションも積極的に行っています。自身もやはりトーレスを起点とするスペインの伝統的なギター、そして特にハウザー1世の製作美学に傾倒し、現在もこれらのマエストロたちのギターを規範とした、外観、音色ともに味わい深い楽器を製作。名手ジュリアン・ブリームが所有するなどプロギタリストからも高い評価を得て、非常に限られた製作本数ながら世界中で愛用者を獲得している、現代ドイツの代表的製作家の一人。
〔楽器情報〕
ゲルハルト・オルディゲス 製作のハウザー1世モデル ‛La Cincuenta y Tres' 2008年製Usedの入荷です。「優れたギターは歴史的な名工たちによって既に完成されている」と断言し、スペイン伝統工法こそがそれらの音響の手掛かりとなると確信したオルディゲスにとって、ヘルマン・ハウザーの高度な洗練はやはりその理想形の一つとして(同じドイツ人としての感性的な共鳴ということもあって)彼の美学の中心に据えられているようです。本作において、彼の全てのギターに通底していることですが、自身の嗜好やスタイルに寄せることなく、また名工の作だからと言っていたずらに豪奢に(外観も音も)仕上げることもなく、ごく自然な、しかしこの上なく気品のある佇まいで着地させており、誠に味わい深い仕上がりとなっています。
表面板内部構造はサウンドホール上側(ネック側)に2本、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバー、左右対称7本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止めるようにV字型に配置された2本のクロージングバー、駒板位置にはほぼ同じ面積の薄い補強プレートが貼られているという全体の配置で、もちろんハウザー1世作のセゴビアモデルに準拠したものとなっています。レゾナンスはF#の少し下に設定されています。
重心の低さをしっかりと感じさせつつ、低音から高音まで同じフェーズで音が均質に連なってゆくような(鍵盤楽器的な)音響設計。しかしながら決して平坦ではなく、和声的な楽曲では各声部のアイデンティティが明確になり、整った音響の中に独特の立体感が生まれる、ハウザーでしか聴くことのできない特徴を円満に備えています。そしてそこにオルディゲスらしい柔和さが加味されて、全体に表情はどこか優しくそしてロマンティックでさえある、大変に魅力的なハウザーモデルとなっています。
表面板のサウンドホール周りや指板両脇などにやや弾きキズ等目立ちます。また横裏板の演奏時に腕や胸の当たる部分などに塗装の摩耗やその他衣服の細かな摩擦あとなどが全体に見られます。割れなどの大きな修理や改造歴はありません。ネックはやや順反りの状態。フレットは適正状態を維持しています。ネック形状は薄めのDシェイプで丸みのあるタイプ。弦高値は3.2/4.0mm(1弦/6弦 12フレット)でサドルには1.0mmの余剰があります。糸巻はRodgers 製ハウザースタイルを装着しています。
Performance video
×
定価(税込)
: 時価
販売価格(税込)
: お問い合わせ下さい。
製作家/商品名
:
カルロス・ホアン・ブスキエール Carlos Juan Busquiel
モデル/品番 Model/No.
:
トラディショナル Tradicional No.135
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
650mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
2021年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース
備考 Notes
:
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:アレッシー
弦 高:1弦 3.2mm/6弦 3.9mm
[製作家情報]
1980年生まれ。スペイン、アリカンテに工房を構える製作家。12歳よりギターを弾き始め、大学ではヴァイオリンを専攻、その後独学でヴァイオリン製作をしていたころにギター製作家のラファエル・ロペス・ポルラスと出会い、本格的にギター製作を学び始めます。そしてジョアン・ペリッサらが主宰した古楽器のセミナーでの名匠ホセ・ルイス・ロマニリョスとの交流から、スペインの伝統的な工法に基づいたギターの魅力に取りつかれ、以後はアントニオ・デ・トーレスを規範とする純粋なスパニッシュギターの製作に専念します。その後もロマニリョスからの多くのアドバイスにより、トーレス以降の名工達(アリアス、ラミレス、ガルシア、シンプリシオ等)の研究を深めてゆく過程で、自らのオリジナル性も同時に追求してゆきます。
彼のギターはトーレスから始まる19世紀から20世紀前半のスパニッシュギターの伝統を規範とし尊重しながらも、そこに現代の音の嗜好と演奏性におけるニーズに対して柔軟に応えた要素をさりげなく加味したもので、幅広い弾き手にアピールできる柔軟さを備えたものとなっています。
[楽器情報]
カルロス・ホアン・ブスキエール トラディショナルモデル2021年製の中古です。
現在4種ある彼のラインナップの中で最もスタンダードなモデル。トーレスレプリカとなる「La Leona」、そしてより音量の増大を指向した「Concerto」 モデルなどがありますが、その中ではやはりこの「Tradicional」が彼の個性と素養とが最も無理なく融合したモデルとなっています。ヘッドシェイプはトーレスですが、内部構造は計6本の扇状力木がセンターの1本を境に高音側に3本、低音側に2本配されており、ボトム部に短い2本のクロージングバー、ブリッジ位置にはパッチ板が貼られているという配置。伝統的ながら、細かな部分に彼自身の工夫も感じさせる構造になっています。表面板はかなり薄く加工してあり、これはスペインヴィンテージのギターを参考にした設定でしょう。レゾナンスはGに設定。非常にヴィヴィッドで明るい発音。やや乾いた感触の響きはかのグラナダの名工たちをも想起させます。
プレイヤー目線での演奏性に対するこだわりもある彼ならではの、握りやすいDシェイプのネック。ネック自体のセッティングも良く、全体に弾き易いモデルになっています。ただし弦の張りは強めでブリッジ弦穴はダブルホール仕様のため、柔らかめのテンション感を楽しみたい方は弦穴をワンホールでの通常の巻き方で弦を装着するのをおすすめします。全体はセラックの丁寧な仕上げ、糸巻きはアレッシーを装着しています。
表面板のサウンドホールとブリッジとの間、弦の張ってある範囲に演奏時によるものと思われる1~3センチほどの傷が数か所あります。また薄く加工された表面板はブリッジ下からボトム部にかけてがほんの若干膨らみがありますが、適切な環境下であれば今後の使用、演奏には問題ございません。
Performance video
×
定価(税込)
: 時価
販売価格(税込)
: お問い合わせ下さい。
製作家/商品名
:
ヘロニモ・ペーニャ・フェルナンデス Jeronimo Pena Fernandez
モデル/品番 Model/No.
:
Especial
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
670mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
1978年
表板 Top
:
杉 Solid Ceder
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース
備考 Notes
:
ネック:セドロ
指 板:黒檀
塗 装:ラッカー
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.8mm /6弦 3.9mm
[製作家情報]
ヘロニモ・ペーニャ・フェルナンデス Jeronimo Pena Fernandez(1933~)スペイン、アンダルシア州のハエン県、マルモレホに生まれ、同地に工房を構える製作家。農家の子として育ちますが、9歳の時に大工の工房に弟子入りし(この工房ではしばしば地元の演奏家たちの楽器も修理していたようです)、ここで木工と装飾彫刻を学んでゆきます。幼少期からギターには興味を持っており、1950年代には独学でギターを作り始めています。それら初期の作の一つがフラメンコギタリストPepe Marchenaを通じてある数学教授兼コレクターのもとに渡り、その出来栄えに感動した彼は自身のコレクションから勉強のために銘器を貸し与えるとともに、フレッティングについての数学的な助言を与えるなどしています。1967年(1966年と記載している文献もあります)にはギター製作家として完全に独立して仕事をするようになりますが、ここに至るまでやはり全くの独学で製作技法を学んでいたものの、その木工技術の精密さ、音とデザインの独創性、すぐれた演奏性など楽器としてのトータルな完成度の高さによって評価と人気を得てゆくことになります。
1993年には自身の製先技法を詳細に記した著書「El Arte de un Guitarrero Espanol」を上梓しており、書中では大工工房でみっちりと修行した彼らしく木材の適正な伐採時期(彼によると1月の、満月から一日経った最初に欠ける日に伐採するのが最適だという)から極めてユニークな内部構造の設計についてなどが語られています。
彼のギターの特徴はまずその外観において、ヘッドと駒板の彫刻、厳選された木材の美しさ、やや大きめなサイズ感とその全体の比類の無い威容、エレガンスにまずはあると言えます。加えて内部構造ではアントニオ・デ・トーレスの伝統的なスペイン工法を土台としながら、より緻密で複雑な設計が為され、それは音響において彼がむしろアーティスティックな感性において追求し続けた音の丸み(redondez)を体現するものとして発想されているがゆえの、ある種数学的な有機性によって統一された極めて美しいものとなっています。またこうした独創性が決して発想の特異さのみに堕することなく、楽器として音楽的な豊かさに帰結しているところはやはり特筆すべきでしょう。
フラメンコとクラシックの両方を製作し、フラメンコではマノロ・サンルーカルらの名手が使用しそのカテゴリーでの名声が高まりますが、杉材の荘重な佇まいが印象的なクラシックがむしろ現在は人気のアイテムと言えるでしょう。付言すれば、イギリスのヘヴィメタルアーティストOzzy Osbourneの初期バンドメンバーであった夭折の天才ギタリストRandy Rhodes(彼は優れたメタルギタリストであると同時にクラシックの正統な教育も受けていました)が1979年製のヘロニモ・ペーニャ製作のクラシックモデルを愛用していたことで、ハードロックファンにはいまも伝説的かつ垂涎のアイテムの一つとなっています。
[楽器情報]
ヘロニモ・ペーニャ・フェルナンデス製作、1978年製 Especial モデル。非常に状態の良い美品Usedが入荷致しました。このブランドの符牒とも言える尖塔形のヘッドシェイプではなく、トーレスを思わせるスタイルで彫刻のデザインも異なります。またラベルも羊皮紙の巻物を紐解いたようなレトロなデザインでこれも彼の通常モデルとは異なり、Especialモデルのみの仕様のようです。ヘッドと駒板などの、印象的ですがしかしぎりぎりのところで抑制されたデザインの彫刻や意匠、彼の面目躍如たる厳選された材(おそらくSequoia杉を使用した表面板の赤みの深さ、横裏板は野趣溢れる中南米ローズウッドの組み合わせ)の美しさ、たっぷりとした容量のあるボディながらしかしスマートさを感じさせるきりっとした外観がやはり素晴らしい。指板エンド部分もささやかな木彫が施され、サウンドホールラベルを慎ましく引き立てていることも特筆すべき点でしょう。
実に特徴的な内部構造を持ったギターです。基本となるのはトーレス的なハーモニックバーと扇状力木の組み合わせ。サウンドホール上下に一本ずつのかなり強固なハーモニックバーを設置していますが、このうち下側のほうのバーはサウンドホールの真下部分を頂点として大きくネック方向に湾曲して設置されています。またネック脚を貫通するようにして1本、そしてネック脚と上側ハーモニックバーとの間にも1本の短くやや繊細な造りのバーを設置。下側ハーモニックバーの低音側のほぼくびれに近い部分からは同じように強固な造りのバーが横板に向かって斜めに下がってゆくようにしかもやはり湾曲して設置されています。サウンドホール周りにはまず一枚の補強板が貼られた上に高音側と低音側それぞれに一枚ずつの幅の狭い補強板が貼られているという二層構造。そしてボディ下部は左右対称5本の扇状力木と3本の等間隔に設置されたバー(これらはハーモニックバーよりも細く低い形状)とが交差しており、そのグリッド状になった枡目の一つ一つに対角線を結ぶようにしてX状の力木が設置されています。この小さなX状力木はサウンドホールの高音側と低音側にも(補強板縁から横板との範囲を覆うように)設置されています。これらXの延長線をつなげてゆくとちょうど表面板下部全体がモダンギターの特徴的な構造の一つラティスブレーシングと同じような格子状配置になるのが興味深い(ちなみにオーストラリアの製作家Greg Smallman が格子状力木を実用化したのも1970年代後半であり、名手ジョン・ウィリアムスが使用したのが1981年製で世界中に認知されるのは1980年代以降であるから、ヘロニモ・ペーニャとスモールマンの直接の影響関係は考えにくいのですが、両者の同時代的な進歩的精神の偶然の一致はギターの製作史を俯瞰してみると非常に象徴的なものを感じさせもします)。また裏板には両横板を繋ぐ計5本のバーと、センターの接ぎ部分にやはり二層構造で補強プレートが設置されている他、高音側と低音側のボトムからネック付け根までを繋ぐ各一本の補強板(裏板と同じ素材で作られている)がほんのわずかに湾曲して設置されてています。レゾナンスはF#とGの間に設定されています。
表面板のはスタンダードなサイズですが、ボディ厚みがアッパー部で10.6cm、ボトム部で11cmあるその容量の大きさと、木材の性質を十全に活かした響き。ふっくらとした奥行きを持ち、レゾナンスが低めながら低音に偏ることがなくむしろ高音域に渡るまで全体に整った、そして非常に洗練された統一感があり、構造的に格子状力木と近似しているせいか、弾性感をともなった、表面板から直に立ち上がってくるような発音が心地よい。音量はしかしモダンギターのような過度に増幅されたような感覚はなく、あくまでも自然に豊かに響きます。演奏において、特に高音の輪郭のはっきりした艶やかな音像が、十分なサスティーンと奥行きを持ちながらまるで形の整った玉のように連なってゆくのがなんとも魅力的で、それを低音の(低音自体も非常に引き締まった音像なのですが)たっぷりした響きが支えるような全体の音響はやはりスペインならではと言えるでしょう。
(コンディションについて)
表面板は駒板下1弦側に弦とび跡がありますが、その他は指板脇に数か所の軽微なスクラッチあとと衣服等による微細な摩擦あとのみで、横裏板もほぼ無傷に近く、年式を考慮すると全体に非常な美品と言える一本。割れ等の大きな修理や改造等の履歴はありません。ネックもほぼ真直ぐを維持しており、フレットも適正値、糸巻きはスペインの老舗ブランドFusteroを装着し、こちらも動作状況に問題ありません。ネックは普通の厚みのDシェイプ。ネックの差し込み角、ブリッジの設定などが絶妙で、670㎜の長いスケールを全く感じさせてない左手の演奏性。弦高値は2.8/3.9mm(1弦/6弦 12フレット)で、サドル余剰は0.5~1.0mm。弦の張りはスケールの割には中庸からむしろ弱めで、この点でも左手のストレスが軽減されています。重量は1.9㎏。
定価(税込)
: 時価
販売価格(税込)
: お問い合わせ下さい。
製作家/商品名
:
パウリーノ・ベルナベ Paulino Bernabe
モデル/品番 Model/No.
:
コンシエルト Concierto
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
650mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
2020年
表板 Top
:
杉 Solid Ceder
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース(ヒスコック)、オリジナル仕様書&保管説明書
備考 Notes
:
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:シャーラー
弦 高:1弦 3.0mm/6弦 4.0mm
〔製作家情報〕
パウリーノ・ベルナベ1世(1932~2007)スペイン、マドリッドの製作家。自身も演奏を能くし、タレガの高弟ダニエル・フォルテアにギター演奏を師事していたのは有名な話。製作家としてはホセ・ラミレス3世の厚い信頼のもと、同工房にて1950年代から1960年代にかけて職工長を務め、この巨大ブランドの黄金期を支えた最重要人物の一人として、まずはギター製作史にその名を残す存在となりました。その後1969年に独立してからは伝統的な製法に則りながらも独自のメソッドによる個性的なギターを作り続け、1974年にドイツ、ミュンヘンで開催された国際クラフト博覧会で金メダルを受賞。そして往年のギターファンにとってはなんと言っても忘れ難い、ナルシソ・イエペスが愛用することになる有名な10弦ギターを製作することになります。息子のパウリーノ・ベルナベ Jr(1960~)は幼少の頃より父の仕事姿に親しみ、17歳の時には正式に弟子入りし20年以上に及ぶ厳しい修行と共同製作の時期を経て、2007年に1世亡き後はこのブランドを引き継ぎます。その後現在に至る2世の時代は父親のブランドコンセプトを十全に継承しつつ、より時代のニーズに合わせた(コストパフォーマンスとプレイヤビリティの双方において)充実したラインナップを展開し、若手のプロギタリストの使用率も高くなっている。現在マドリッドを代表するブランドの一つとして高い評価を得ています。
〔楽器情報〕
パウリーノ・ベルナベ Conciertoモデル 2020年 表面板杉仕様のUsed良品が入荷致しました。
ベルナベは2000年前後から上位機種でも4種類以上のモデルをカタログ化しており(現在はConcierto、Especial、Torres、Royalの5種)、それぞれ使用材のグレードなどによってランク分けされていますが、当モデルはその導入に位置するモデルとなります。とはいえこの名門ブランドのプロフェッショナルシリーズとだけあって、そのクオリティは確かなもの。またベルナベ独自の構造的工夫、時代のニーズを敏感に感じ取りそれを伝統的スタイルの中に落とし込むその着地点の絶妙さについては、マドリッド派の中でもやはり際立ったものといえるでしょう。
以前のConciertoモデルと比較すると本作では板はより薄く加工され、全体も軽量化しており(1.60㎏)、更に塗装も薄めの仕上げとなっています。そのためかフラメンコ的ともいえるような生々しさ、反応の速さ、木がじかに震えるような太く乾いた響きがぎりぎりまで追及され非常な迫力、そして適度な色彩感が備わっています。やや大柄なボディですが弦の張りは中庸で、ネックはかなり薄めのCシェイプタイプのため左手の感触は非常にコンパクトに感じます。レゾナンスもまたかなり低く、E~Fに設定されています。
内部構造はサウンドホール上下各一本のハーモニックバー、そしてサウンドホールの丁度真下の位置から高音側と低音側の横板に向けて1本ずつ斜めに伸びる力木がちょうどハの字型になるように設置、ボトム部にもハノ字型に2本のクロージングバーが設置され、表面板中心部分を菱形に囲むような形になっています。その菱形になったスペースの中心に表面板の木目に沿うように平行に設置された3本の力木とブリッジ位置に貼られたプレートという独特な力木構造で、これはベルナベ1世のEspecialモデルなどに採用されていた構造を忠実に踏襲しています。さらに2世はここで非常に独特な工夫を加えており、上記の菱形になった部分の表面板に円形の浅い掘り込みを何重にも入れており、ちょうど1センチ幅ほどの同心円が表面板下部をブリッジを中心としてまんべんなく張り巡らされているような形になっているうえ、同部分のみ何か焼き込みをを施したように明確に黒くなっています。この仕様は現在の同モデルでは採用されておらず、この年式特有のものとなっています。
表面板指板脇の高音側とサウンドホール下側にわずかに細かなスクラッチあとがあるほかはほとんど傷もなく、また割れなどの大きな修理履歴もありません。ネック、フレット等の演奏性に関わる部分も良好です。オリジナル仕様書と保管説明書(英語)が付属しています。
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定価(税込)
: 時価
販売価格(税込)
: お問い合わせ下さい。
製作家/商品名
:
ルベン・モイセス・ロペス Ruben Moises Lopez
モデル/品番 Model/No.
:
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
648mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
2002年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option
:
軽量ケース
備考 Notes
:
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:ゴトー
弦 高:1弦 3.4mm/6弦 4.0mm
[製作家情報]
1967年 スペイン、マドリッドの生まれ。父親は同地の名工として名高いマルセリーノ・ロペス・ニエト(1931~2018)。楽器ミュージアムと工房が一緒になったような自宅の環境の中で、彼は5歳の頃より木工についての基礎知識とギター製作を学び始めます。父親の工房でじっくりと熟成させるようにその技術を磨いていった彼は、満を持して1990年代の後半より自身のラベルにてギターを出荷するようになります。父親譲りの丁寧な仕事で仕上げられたギターは音色と外観とに独特の滋味を漂わせ、スペインの先達への敬意に溢れた楽器として、当初より高い評価を得てきました。現在は製作を行っておらず、父マルセリーノも他界してこの工房からの新作の知らせがなくなったことが、多くのギターファンから惜しまれています。
<楽器情報>
ルベン・モイセス・ロペス 2002年製 クラシック、オリジナルモデルです。父親であるマルセリーノ・ロペスの作風をさらに渋くしたようなヴィンテージ感漂うたたずまいは、同時代の製作家の中ではむしろ個性的とさえいえるマドリッド独特の雰囲気を湛えています。音色と響きも同様に渋く、しかしながら音量、表情、ダイナミックレンジや発音の反応性などどれも不足ありません。
全体に弾き傷、打痕等やや多くありますが大きな修理履歴はなく、ネック、フレット等演奏性に関わる部分での問題もありません。現在では貴重となってしまったブランドの珍しい中古での入荷です。
定価(税込)
: 時価
販売価格(税込)
: お問い合わせ下さい。
製作家/商品名
:
ラファウ・トゥルコウィアック Rafal Turkowiak
モデル/品番 Model/No.
:
The Queen of Guitars No.123
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
650mm
国 Country
:
ポーランド Poland
製作年 Year
:
2016年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
ウォールナット合板 Walnut
付属品 Option
:
ハードケース黒、オリジナル証明書、ブランドロゴ入りクロス
備考 Notes
:
ネック:メイプル
指 板:黒檀
塗 装:ラッカー
糸 巻:Der Jung
弦 高:1弦 3.0mm /6弦 3.9mm
[製作家情報]
ラファウ・トゥルコウィアック Rafal Turkowiak 1966年 ポーランド生まれ。父親は大工で、幼少より自然と木工への興味を深めていたようです。ギターの演奏も能くし、15歳で地元の音楽学校に入学しますが3年のカリキュラムをわずか半年で終了してしまうなど早くから才能を発揮していました。家庭環境の中から培った木工技術と演奏者として自然に湧きおこる楽器への深い興味とが合わさり、彼は当初からきわめて実用に即した演奏性と音響とを追求した製作を試みるようになります。現在クラシック、アコースティック、ウクレレからマンドセロまで広範なラインナップを旺盛に展開していますが、それらは全てデザイン、木材のセレクト、細かな仕様に至るまできわめてユニークなものとなっており、とりわけギターという楽器の音響効果におけるいくつもの「innovative」な試みを具現化した設計は評判となり、現在ヨーロッパを中心に人気が高まっています。
[楽器情報]
ラファウ・トゥルコウィアック製作のクラシックギター、‘The Queen of Guitars’ 2016年製 No.123 Usedの入荷です。この製作家独自の発想によるいくつもの新しい音響効果の試みが採用されたモデル。それらはブランドの公式なアナウンスによれば、ネック内部に搭載された音響管によりボディとネックの相互の共振性を高める<Acoustic Tubes>(12フレットより上のレイズドフィンガーボード加工になった指板サイド部分に特徴的な開口部が設けられ、ネック内で発生する音圧をそこから放出するとのこと)や、弦の張力による表面板へのストレスを軽減し、表面板の振動効果を最大限に発揮させる<Wave Resonator>システムなどが特徴として挙げられています。そしてまた表面板の力木構造や、人間工学的な要請と審美性を融合したボディデザイン、野趣溢れるエキゾチック材の使用による外観などもやはりこのブランドの他にはない個性として特筆すべきでしょう。
表面板力木配置はシンプルな中に精緻な工夫がみられるもので、その純粋なオリジンとなるものはトーレス的な扇状力木構造ですが、そこから発展させ左右非対称の格子状力木構造へと昇華させています。サウンドホール上側に通常の平坦な形状のハーモニックバー、下側には上部がゆるやかな三つの山型になった1本のハーモニックバーを設置。この2本のバーの間、そしてネック付け根と上側バーとの間を各2本の力木が高音側と低音側に1本ずつ、それぞれ横板のカーブの方向に沿うようにして設置されており、そのため表面板上部はこれら計4本の力木が大きく菱形を形成しているような配置になっています。ウェストより下は幅約8㎜、高さ1~2mmほどの薄く平べったい形状の力木による格子状配置で、いわゆるオーストラリア派(グレッグ・スモールマンに代表される)のLattice ブレーシング構造とは異なり、基本的に表面板木目に沿った力木とそれとほぼ垂直に交差する力木とによって形成される碁盤の目のような配置になっています。これはしかし均質な格子を形成しているわけではなく、実際には高音側と低音側とでゆるやかな非対称を形成しており、この自在な厳密さにこそ製作家の特徴が現れていると言えます。まず表面板木目の方向には計6本が設置されており(ほんのわずかに扇状配置となっている)、このうち5本が駒板の幅に収まるようにしてほぼ平行に近い角度で、残りの一本がやや離れて高音側に設置。そしてこれらにほぼ垂直に交差するようにして計7本の力木が横幅いっぱいに表面板下部をまんべんなく覆うようにして設置されています。サウンドホール下のハーモニックバーとこれら7本の横の力木もやはり厳密に木目と垂直に設置されているわけではなく、低音側は間隔を広く、高音側にいくにしたがってわずかに狭くなっていゆくように配置されています。さらに駒板の位置にはほぼ同じ面積で3~4㎜厚の板が力木の上に乗っかるようにして設置されており、駒板部分の補強効果のほか、先述のWave Resonatorシステムの一環としての役割も担っていると思われます。また彼は他のモデルでは表面板と横板との接合部にペオネス(小型の木製ブロック)またはそれに類する補強材を一切設置しない斬新な組み立て方法を採用していましたが、ここではライニングを設置しています(ただし珍しい木目の、通常この部分には使用しないような木材を使用しています)。また裏板はバーを一本も設置していないのですが、横裏板もまた製作家独自の発案による方式(High Tech Press)で製材されたもので、音響効果と耐性を飛躍的に向上させたとしています。レゾナンスはEの少し上に設定されています。
撥弦の瞬間から一切の曖昧さのない整った音が現れます。同一弦において、また各弦間においても音像は非常な洗練により均質化されており、例えば和音におけるひとつの音の塊としての統一感とアルペジオにおける明確な分離は比類がないと言えるほど。全体は同一の位相で鳴っているような音響ですが平板な印象はなく、低音のどっしりとした重心感覚が全体をバランス良く構築し、響きには奥行きもあります。サスティーンでは音の密度が保持され、発音と終止の瞬間にはきりっとした身振りがあり、さらに磨かれたように艶やかな音なので曲の演奏は自然とすっきりとした上品な表情になります。こうした響きと音における発音特性は例えば対位法的な旋律においては明確な遠近感を形成し、スラーやスタッカートやトリルなどの装飾的旋律は明晰な身振りを生み出します。
弦の振動が木の声となって湧出するようなスペインギター的な音響とは異なり、弦の振動が様々なプロセスを経て精製されたような音で、ある種即物的(あるいは純音楽的)とさえいえるような音響特性を持っています。彼の発明したシステムがこの音の精製プロセスを十全に統御しているがゆえなのでしょうか、音色に関してはスタティックなところがあり、タッチに対する表情の変化などは限定的なものとなっています。しっかりした音圧を備えていますが、モダンギター的な大音量というわけではなく、あくまで自然な鳴りとしての豊かさが追及されているところも彼の性質によるものでしょう。
このブランドはまた個性的な杢目の材によるexotic な外観が特徴ですが、本器も横裏板には印象的なカリフォルニア・ウォルナット・バール材を使用、裏板はアーチ加工が施されています。横裏板内側にはスプルース材を貼り付けた二重仕様。また表面板はアルパインスプルースで右肘を当てる部分には黒檀によるアームレストを模したような傾斜加工がされています。ロゼッタは黒檀と天然黒真珠が象嵌され、ブランドロゴのクラウンマークがあしらわれています。塗装はこれも製作家により独自に調合されたグロスフィニッシュ加工。全体は僅かなスクラッチあとのみの非常にきれいな状態で割れなどの大きな修理履歴はありません。ネックはやや順反り、フレットは適正値を維持しています。ネックはDシェイプを基本として高音側をやや薄くした形状。指板は高音側20フレット仕様でレイズドフィンガーボードとなっており、ハイフレットでの左手の演奏性が追及されています。弦高値は3.0/3.9mm(1弦/6弦 12フレット)、サドル余剰は1.5~3.0mmあります。糸巻はDer Jung 製で動作状況に問題ありません。重量は1.77㎏。オリジナル証明書付き。
定価(税込)
: 時価
販売価格(税込)
: お問い合わせ下さい。
製作家/商品名
:
アンヘル・ベニート・アグアド Angel Benito Aguado
モデル/品番 Model/No.
:
エストューディオ Estudio
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
650mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
2008年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
インディアンローズウッド Solid Indian Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース
備考 Notes
:
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:ポリウレタン
糸 巻:ゴトー
弦 高:1弦 2.8mm /6弦 3.5mm
[製作家情報]
1949年スペイン、マドリッド生まれ。最初は家具職人として身を立てていましたが、20代半ばにはギター製作家に転身。スペイン古楽演奏の名手ホセ・ミゲル・モレーノとのコラボレーションは彼のキャリアにおいて極めて重要な位置を占めており、ビウエラ、リュート、テオルボやバロックギターなどの古楽器への知見を深めるとともに、トーレス以降現代にまで続くスペインギターの伝統を跡付けるように製作を展開してゆきます。特にトーレスへの傾倒を明らかにしながらも、完全なレプリカではなく自身の研究と音響嗜好と盛り込んだ彼のギターはトラディショナルな響きを愛好するギタリスト達の支持を集めています。
[楽器情報]
アンヘル・ベニート・アグアドのEstudioモデル 2008年製Used の入荷です。プロフェッショナル用として展開するConcert シリーズや歴史的名品の研究を活かしたEarly Guitars シリーズと併せてラインナップされているStudentシリーズの一本。文字通り入門者から中級用として作られているバランスフルなモデルです。表面板は松、横裏板はインディアン・ローズウッド合板、650㎜スケールでネックシェイプは普通の厚みのDシェイプ。スペインのマドリッド的(特にラミレス3世以降の)な特徴を不足なく備えた音で、十分な音圧、重厚な響き、程よく艶を湛え、表情も豊か。表面板内部構造はサウンドホール上側(ネック側)に長短1本ずつのハーモニックバー、下側(ブリッジ側)に1本のハーモニックバーとその中央、ちょうどサウンドホールの真下部分から高音側に向かって斜めに下がってゆくように設置された1本のトレブルバー、そして6本の扇状力木がセンターに配された1本を境に高音側に2本、低音側に3本を配置。ボトム部にはそれらの先端を受け止めるように2本のクロージングバーがハの字型に配置され、駒板位置にはほぼ同じ範囲に薄い補強プレートが貼られているという全体の配置。扇状力木はそれぞれの間隔は均等ではなく、やや低音に寄った形で配置されており、トレブルバーの設置など、全体にアシンメトリな構造になっています(この力木配置もやはりマドリッド派によく採用されていたスタンダードなパターンの一つ)。レゾナンスはG#~Aの間に設定されています。
表面板のサウンドホール周りや下部全体に細かな搔き傷や小さな打痕ががあります。裏板低音側は恐らく湿度変化等の影響による塗装の若干の変色が見られます。裏板にはネックヒール近くに木目に沿って段差を生じている部分がありますが、現状で割れには至っておらず、適切な環境下での使用であれば継続しての使用に問題はありません。ネックはわずかに順反りですが標準設定の範囲内。弦高値は2.8/3.5mm(1弦/6弦 12フレット)、サドルは現在下敷きが設置されており、その状態で1.5~2.0mmの余剰があります。糸巻はGotoh のSchaller モデル。
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定価(税込)
: 時価
販売価格(税込)
: お問い合わせ下さい。
製作家/商品名
:
ヘスス・ベジード Jesus Bellido
モデル/品番 Model/No.
:
トーレス6 モデル Torres 6
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
644mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
2007年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
ケース別売
備考 Notes
:
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:木ペグ(ペグヘッズ)
弦 高:1弦 2.8mm/6弦 3.7mm
〔製作家情報〕
1966年生まれ。スペイン、グラナダの製作家。父親は同地の代表的な名工の一人マヌエル・ベジードで叔父はやはり製作家のホセ・ロペス・ベジード。13歳のころより父の工房に入り、17歳で最初のギターを製作しています。1989~1995の間はギター製作の講師としての職に就き、その後最初の工房を設立して製作に専念。1999年に父マヌエルの工房に戻り現在に致ります。古今の名工たちの多くのギターを修理や復元した経験から、特に自国の銘器に対する造詣が深く、それは彼の作るトーレス、サントス・エルナンデス、マヌエル・デ・ラ・チーカなどのレプリカモデルに顕著にあらわれています。また彼のオリジナルモデルもまたこうしたヴィンテージギターのように素朴で明朗、木質の味わい深い響きと迫力を同時に備えており、古き良きアンダルシアの音を蘇らせたものとして高く評価されています。発音は生々しく、非常な速さで立ち上がってくる音はダイナミックレンジ、音量ともに名工の多いグラナダスクールの中でも際立っています。造作にはやや粗さが見られるものの、セラック塗装でいかにも手作りといったその外観は音色同様に素朴なたたずまいを見せ、やはりこのブランドの大きな魅力の一つとされています。
〔楽器情報〕
ヘスス・ベジード製作のトーレスモデル (Torres 6とラベルには表記)2007年製Usedの入荷です。彼自身のオリジナルモデルとともに常にラインナップされている「トーレス」のひとつ。同地グラナダの先達マヌエル・デ・ラ・チーカのレプリカをはじめとするヴィンテージシリーズは彼の純粋な敬意が表れたどれも秀逸なものですが、クラシックギターの祖と言えるトーレスに対してはやはり特別なものがあったようです。よく知られているのは1883年製 SE54 のレプリカで、19世紀ギターを思わせる小柄なプロポーションでボディ厚も薄く、しかし豊かな鳴りを備えた魅力的なトーレスモデルですが、本作Torres 6はそれよりも現代的なサイズ感に近いミドルサイズのトーレス。
糸巻はPegheds製のギア付き木製ペグ仕様。そのためもあってかヘススらしい、耳に直接触れてくるような生々しい木質の響きで、彫りが深く、程よく粘り、弦に触れるだけで反応するような発音の鋭敏さが特徴的。そして特に高音は意外なほどにしっかりと艶を湛えており、これが古雅とフレッシュネスが同居したような音響を生み出しています。
彼のこうした特性はオリジナルと非常に相性が良く、実に自然にトーレス的キャラクターとして着地しています。現在世界中のあまたのブランドが同様のモデルを製作していますが、そのほとんどが現代的感覚でいわば rework あるいは remodel した楽器となっているのに対して、ヘススのそれはまさにreplicaとしての19世紀的な存在感を放っています。
表面板内部構造はサウンドホール上下に1本ずつのハーモニックバー、ボディ下部は左右対称5本の扇状力木、駒板位置には薄い補強プレートが貼られているという配置。ボトム部にクロージングバーは設置されておりません。5本の扇状力木はが駒板の幅の中に収まるようにして設置されており、これは上記1883年 SE54のスタイルを踏襲しているとのこと。レゾナンスはG#の少し上に設定されています。
全面オリジナルのセラック塗装で、表面板の特にサウンドホール周辺はやや演奏時の搔き傷が目立ちますが年代相応のレベルです。割れなどの大きな修理履歴はありません。ネックは厳密にはわずかに順反りですが許容範囲、フレットは適正値を維持しています。ネックシェイプは薄くフラットなDシェイプでベジードの特徴的な仕様です。
この後2010年前後からヘススのギターはさらに軽量化し、塗装はさらに繊細に、ボディ厚も薄くした仕様へと一旦シフトしてゆきますが、本作はその直前の、製作家の嗜好とモデルが要求するものとが円満なバランスで体現された一本となっています。
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定価(税込)
: 時価
販売価格(税込)
: お問い合わせ下さい。
製作家/商品名
:
ヘスス・ベジード Jesus Bellido
モデル/品番 Model/No.
:
トーレスモデル model Torres 1883 SE54
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
644mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
2015年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース
備考 Notes
:
ネック:セドロ
指 板:エボニー
塗 装:セラック
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 3.2mm /6弦 3.5mm
〔製作家情報〕
1966年生まれ。スペイン、グラナダの製作家。父親は同地の代表的な名工の一人マヌエル・ベジードで叔父はやはり製作家のホセ・ロペス・ベジード。13歳のころより父の工房に入り、17歳で最初のギターを製作しています。1989~1995の間はギター製作の講師としての職に就き、その後最初の工房を設立して製作に専念。1999年に父マヌエルの工房に戻り現在に致ります。古今の名工たちの多くのギターを修理や復元した経験から、特に自国の銘器に対する造詣が深く、それは彼の作るトーレス、サントス・エルナンデス、マヌエル・デ・ラ・チーカなどのレプリカモデルに顕著にあらわれています。また彼のオリジナルモデルもまたこうしたヴィンテージギターのように素朴で明朗、木質の味わい深い響きと迫力を同時に備えており、古き良きアンダルシアの音を蘇らせたものとして高く評価されています。発音は生々しく、非常な速さで立ち上がってくる音はダイナミックレンジ、音量ともに名工の多いグラナダスクールの中でも際立っています。造作にはやや粗さが見られるものの、セラック塗装でいかにも手作りといったその外観は音色同様に素朴なたたずまいを見せ、やはりこのブランドの大きな魅力の一つとされています。
〔楽器情報〕
ヘスス・ベジード製作のトーレス 1883年 SE54 モデル 2015年製Used の入荷です。ラベルには「Recreacion Torres 1883 No.54 2e Epoca No.1」と直筆で書かれており、現代のギターの祖であるアントニオ・デ・トーレス(1817~1892)の1883年製 SE54のレプリカモデルと言えるもの。しかしながら本器では基本的な設計はオリジナルに準拠しながらも、むしろヘスス自身の再創造(Re‐creation)とでも呼べるものとなっており、数多ある同種のモデルのなかでも製作家の理念とオリジナルが持つ機能性とが反駁することなく円満に着地している例として珍しいと言えます。
ヘススは自身のオリジナルモデルと併せてキャリア初期からトーレス、サントス・エルナンデス、マヌエル・デ・ラ・チーカなどの名工たちへのオマージュモデルをラインナップ化しており、それらはオリジナルを実地に検分し、それぞれの音響特性を自身のアンダルシア的傾向と技術的完成のなかに落とし込んだようなモデル群で、結果どれもヘススの嗜好が色濃く表れているのですが、いかにもオールドスパニッシュな感触の響きが大きな魅力となっています。しかしながら彼の研究の深化とともにマイナーチェンジが都度繰り返されるため、製作年によってかなり楽器本体も音も異なり、中には彼の意向がギターを完成させるうえで齟齬を生じていると感じられる時期もあります。
2015年製となる本作ではヘススのそうした製作哲学とモデルの本質とが実に円満に融和しており、近年出色の1本となってます。表面板内部構造はサウンドホール上側(ネック側)に1本のハーモニックバー、そして幅3cmほどの薄い補強板が横幅いっぱいに貼られており、下側(ブリッジ側)は1本のハーモニックバー、左右対称5本の扇状力木と駒板位置にほぼ横幅いっぱいに貼られた1枚の薄い補強プレートという全体の配置。この駒板位置の補強プレートは駒板の約半分の幅で成形されており、高音側一番端の部分のみがやや広めに加工されています(この補強プレートはオリジナルのトーレスにはない仕様)。レゾナンスはG#の少し上という設定。
スモールボディで厚みも薄い設計ですが、たっぷりと充実した鳴りが聴かれます。ヘススらしい乾いた発音ながら音像には艶があり、各弦とも十分なサスティーンと絶妙な奥行き感をともないながら良く歌い、その(このブランドとしてはむしろ珍しい)洗練されたロマンティシズムはトーレスをはるかに隔てて現代的な響きとさえ言えるほど。そして彼特有のグラナダ的明るさ、さらには(これも彼としては意外なほど)全体の音響バランスも秀逸で、タッチに対する音色変化のリニアニティも申し分ありません。曲を演奏していると楽器のほうから提案してくるような、名器のような感覚さえあり、誠に瞠目すべき個体となっています。
割れや改造等の大きな修理履歴はありません。全体は繊細なセラック塗装仕上げ。表面板全体に微細な弾きキズ、打痕、搔き傷等がありますが、外観を著しく損なうものではありません。横裏板はわずかに衣服などによる摩擦あとのみとなっています。ネックはやや順反りの状態、フレットは1~6フレットでほんのわずかに摩耗見られますが演奏性への影響はありません。ネック形状は薄いDシェイプのフラットな形状。弦高は3.2/3.5mm(1弦/6弦 12フレット)でサドルには1.0~1.5mmの余剰があります。糸巻はスペイン老舗のフステーロのトーレスタイプを装着。ロゼッタデザインはヘスス自身のオリジナル、矢羽根柄と四角形を組み合わせた文様でなかなか繊細な細工が施されていますが薄茶を基調とした落ち着いた色合いでまとめており、さらには駒板やヘッドプレート、横裏板の木の色も同様の薄茶で統一しており、重厚過ぎず、しかしモデルにふさわしい気品で作りあげています。
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定価(税込)
: 時価
販売価格(税込)
: お問い合わせ下さい。
製作家/商品名
:
ホアキン・ガルシア Joaquin Garcia
モデル/品番 Model/No.
:
No.863
スペック
カタログ
&問合せ
弦長 Scale Length
:
660mm
国 Country
:
スペイン Spain
製作年 Year
:
1977年
表板 Top
:
松 Solid Spruce
横裏板 Back & Sides
:
中南米ローズウッド Solid South American Rosewood
付属品 Option
:
ハードケース
備考 Notes
:
ネック:マホガニー
指 板:エボニー
塗 装:ラッカー
糸 巻:フステーロ
弦 高:1弦 2.5mm/6弦 3.0mm
〔製作家情報〕
ホアキン・ガルシア・フェルナンデス、スペイン移民の子として1929年アルゼンチンに生まれる。2歳の時に故郷スペインのアストリアスに戻り、15歳で家具工房のチーフとして働くようになりますが、フランコ政権下の状況から逃れるため1949年に再びアルゼンチンに移住します。軍役に従事しながらアルバイトとしてギター工房で働いていたところ、家具製作で培った木工技術の高さを評価され、本格的なギター製作をすすめられます。その時期のアルゼンチンもまた独裁国家への方向性が濃厚になり、ガルシアは再びスペインに戻ることを決意、1975年にヴァレンシアの地に落ち着き、同地のギター工場 Raimundo y Aparicio の製作アドバイザーに就任します。1982年にマラガに初めての自身の工房を設立、現在も息子ニコラスとともに製作を続けています。
ほぼ完全に独学となる彼のギターはスペインの伝統的なギターを規範としながらも、構造や仕様等に独特の個性を感じさせるものが多く、またその出自からかどこか南米的な雰囲気も漂わせているものがあり、クラシックユーザー以外のジャンルでも愛奏されることの多いブランドです。またRaimundo 系のブランドではいまでもこの製作家の影響を感じさせるモデルが多く作られており、当時の重要なアドバイザーであったことが伺えます。
〔楽器情報〕
ホアキン・ガルシア 1977年製作 No.863 中古が入荷致しました。ラベルにValencia と記載されており、また全体の仕様から、当時努めていたRaimundoより出荷されたものと思われます。内部構造は非常に独特で、サウンドホール上に3本のハーモニックバー、同じく下側には低音側から高音側に向かって下がってゆくように斜めに設置されたハーモニックバー、そのサウンドホール上下のバーの間をちょうど横板のカーブに沿うようにホール両側にそれぞれ3本の力木、そしてそれとは別にホールの真下の位置(丁度表面板のセンターにあたる部分)から高音側の3本の力木を突き抜けるように横板に向かって1本の力木を配置。扇状力木は合計9本が間隔を密にして表面板センターに寄り添うように配置され、横幅一杯に設置された4本のトランスバースバーを貫通してボトム部の手前まで伸びています。裏板のバー配置も。通常のギターは3本のところ5本が等間隔に設置され、更にそれら5本と交差するように別の2本の、ネック付け根部分からボトムまで伸びる太いバーが支えるように組み込まれており、ちょうどサウンドホールからのぞくと梯子が掛けられているような形状で設置されています(この梯子状のバー設置方式は現在でもRaimundoギターのハイエンドモデルで採用されています)。レゾナンスはGの少し上に設定。横板は中南米ローズウッド、裏板はインディアンローズウッド仕様になっています。
厚めのウレタン塗装で重量もありますが、発音は意外なほどにヴィヴィッドで音量もしっかりあります。スペイン的な華やかさというよりもむしろ渋めな音色で、どこか南米産のギターを思わせる響き。
表面板指板両脇割れ補修、またブリッジ下のセンター部分に割れ補修履歴があります。裏板ボトム部に木目に沿って10cmほどの割れ補修跡。表面板の特にサウンドホール周りに弾き傷打痕が多数ありますが、横裏板は比較的傷も少なく良好な状態。フレットはやや摩耗していますが現状で演奏上の問題はありません。ネックは真直ぐの状態を維持しており、通常の厚みのDシェイプ仕様となっています。664mmスケールですがサイズ感としては特に大きめの感触はなく、ノーマルな感覚で弾ける一本となっています。
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