表面板内部構造はボディウエストから上はサウンドホール上(ネック側)に2本、下(ブリッジ側)に1本で計3本のハーモニックバーを設置し、それらすべてのバーの高音側と低音側とに長さ5センチ高さ3~5㎜ほどの開口部が設けられ、計4本の力木が(高音側と低音側それぞれ2本ずつ)これらのバーと垂直に交わるように開口部をくぐりぬけて設置されています。この4本の力木はネック付け根のすぐ脇からウェストの部分まで、つまり表面板上部の長さで設定されており、その先端が表面板下部の扇状力木へと連なってゆくように配置されています。ボディウエストより下は左右対称7本の扇状力木とそれらの先端をボトム部で受け止めるようにハの字型に設置された2本のクロージングバー、ブリッジ位置には駒板と同じ大きさの薄いプレート板が貼られているという全体の構造。表面板と横板の接合部にはオリジナルでは大小のペオネス(三角形型の木製のブロック)を交互に設置していますが、ここでは同じ大きさのペオネスを隙間なく設置するノーマルな仕様。ペオネスを除く設計はホセ・ルイス・ロマニリョス著「Making a Spanish Guitar」の中ではPlan1として掲載されているものと同じもので、トーレス=ハウザー的スタイルをロマニリョスが再構築したものとしてスタンダード化している設計の一つ。難度の高いこの設計を山根氏は忠実になぞり、また細部に至る工作も非常な精緻さで、丁寧な作業が行き届いています。重量は1.52kgと軽め。レゾナンスはF#の少し上に設定されています。